2010年 04月 16日
石神井公園 常連になるという贅沢。
 冬には寒々としていた木々の枝に芽が出て、花が咲き、そして一気に若葉が茂るようになり、いつしか赤く色づく。公園の自然は、季節ごとにありようを変えていく。公園は、通ってこそ、その魅力を感じ取れる場所だ。日々の中で少しずつ変わっていくさまを、何度も繰り返し、時間をかけて感じとっていくこと、それが心地よいから、ぼくは公園に行く。

 そんな自然の変化を味わえる場所として、石神井公園は、高いクオリティを持っている。

 池の周りを歩いてみると、2つある池それぞれがほど良い距離のウォーキングコースを持っていることに気が付く。そして、木や草が繁茂し、数多くの生物が生息していることが判る。ひとつひとつをなぞるように確かめていくうちに、少しずつ時間の流れが変化していく。

 ここに集う人たちは、時の移ろいを楽しむ余裕を持つ偉大なる「暇人」が多い、ように思う。

 ある時、歩いていると、大きなカンバスのごく一部分を使って緻密な線画を描いているおじいさんを見つけた。面白い絵だなあと思っていたら、次行ったときもそのおじいさんは気難しい顔をして、同じ場所に座って一心不乱に描き続けていた。覗き込んでみると線画は少しだけ面積を増やしていたが、カンバスを埋め尽くすにはまだまだ時間が、ごく控えめに見て、あと1年は優にかかりそうだった。

 確かに池の周りに生い茂る木々のぼさぼさ度はかなり高い。だから細密画風で描こうとしたら時間はかかるだろうとは思う。でも、それだったら別の題材だって見つけられるはずだ。にもかかわらずおじいさんは、石神井公園にある自分の場所に座ることを続ける。

 しゃべりかけたかったが、その顔は、自分だけの時間を堪能したい、と無言で語っているようにも見えたから、想像でしかない。だが多分、おじいさんの絵がゆっくりしか進まないのは、彼が意識的にそうなるようにしているからだろうと思う。彼は、この公園に、出来る限り通って、そこで時間をゆっくりと過ごしたいのだ。そのために絵を描いているのだ。何かをクリエイトするため、ではない。要するに1年がかりの壮大なる暇つぶしである。

 そんなほんものの遊び人たちに、この公園はとてもやさしい。

 池にはボートがあり、畳に座り込んで木々やカモを眺めながらアルコール摂取可能なお茶屋もあるこの公園は、1日かけて遊べる場所でもある。どこにでもありそうだが、この「なにかしなきゃ」的なあおられ感の希薄さ、ゆるやかさは、この公園にしかないものだ。

 だから、ここに行って帰ってくると、程なくしてまた行ってみたいと思うようになる。同じように感じる人も多いのだろう、この公園には、老若男女問わず常連さんが多いようにも感じる。そして、リピーターが多いのは、いい公園の必須条件のひとつである。

 おじいさんのカンバスには木々が描かれていた。それが最終的に新緑の絵になろうと紅葉の絵になろうと、毎日そこに座って描かれたものには、きっと、ここでしか味わえない時間の流れが編みこまれるだろう。

 石神井公園に集う人たちは退屈の中に転がっている贅沢を見つけ出した人たちなのだ。

 ♣♣♣

石神井公園(しゃくじいこうえん)
*所在地:練馬区石神井台1-26-1
*アクセス:西武池袋線「石神井公園」下車 徒歩7分/西武新宿線「上井草」・JR中央線「阿佐ヶ谷」・JR中央線「荻窪」より「長久保」行き西武バス「三宝寺池」下車/西武新宿線「上井草」・西武新宿線「井荻」・JR中央線「荻窪」より「石神井公園駅」行き西武バス「石神井公園」下車 /西武新宿線「下井草」・JR中央線「阿佐ヶ谷」より「石神井公園駅」行き関東バス「石神井公園前」下車/西武新宿線「上石神井」・JR中央線「吉祥寺」より「成増町」行き西武バス「石神井中学」下車 徒歩5分/西武新宿線「上石神井」より「順天堂練馬病院」行き練馬区福祉コミュニティバス「石神井公園」下車
*その他付帯設備: 石神井池にボート場(営業時間:9:00〜17:00 休日:毎週木曜日(木曜日が祝日の場合は翌日)*年末年始、12〜2月は土日祝日のみの営業

ミシュラン(☆3つが最高)
ひとり: ☆☆☆ 絵などを描きつつ、三宝寺池脇の食堂でアルコールをたしなむ。そんな一日を過ごせるのが粋なヒトだと思います。 
ふたり: ☆☆  ここのボートは井の頭公園のような伝説はないので気兼ねなく乗ってOK。楽しいことを素直に行なっていい公園です。
おおぜい:☆☆  カレー鍋とオヒツにつめたゴハンをキャリーに乗っけて持って来て、ここで食べてる家族を見かけました。楽しそう。
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by na2on | 2010-04-16 23:06 | 公園案内。


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