2010年 04月 19日
葛西臨海公園 いつかどこかで。
 駅を降りて、まっすぐのびる広い道を歩いてゆくと、海辺に面した崖の端に建つビルにいきあたる。全面ガラス張りの、向こう側が透けて見える建物の階段を、いちばん上までのぼる。すると、眼下に草はらと、砂浜、その向こうに海が広がる景色がガラスの先に広がる。海の向こうには工場地帯の煙突、左にはうっすらと房総の山々が姿を見せる。

 真下に目線を移し、草はらで走り回る子供や犬を眺めていると、既視感におそわれる。いつか、どこかで見たような景色だが、どこでだったか思い出せない。思わず階段を降りて、あたかも今まで見ていた映像の中へ自らが入って行くような心持ちになって、草はらに立つ。何種類かの草花を混ぜて作られた広い草はらを踏みしめながら、横切ってゆく。

 片隅に作られた丹精にこしらえられた花畑の向こうには、観覧車がひとつ、空に向かってそびえる。海を振り返って見てから木々の中へのびる小道に入ると、森のあの静かな空気に包まれる。ぽっかりと開いた人気のない緑地には、小川が流れ、忘れ去られたような小さな橋がかけられている。

 この公園を歩くと、いつかどこかで見たような場面が、ひそやかに連なってゆく。切ないような心象風景が、現実に描かれている感覚である。

 ぼくは公園の魅力のひとつに、自然と人間のせめぎあいのバランスがあると思っている。公園にある自然は、あくまで人の手によって管理された自然だ。しかし自然の意思のようなものは残っている。その野生の部分の残り具合で公園は魅力的になったり、つまらないものになったりする。

 ところが、海辺の公園に来ると、人工的にこしらえられたなぎさの、ずっと先まで広がる海は、やはり、人の手の及ばない自然だという気がする。もちろん、木々や草花や陸地の生き物だって、人間の意思など軽く乗り越える力強さは大いに持ち合わせている。しかし、水は彼ら以上に人の意思を寄せ付けない。

 海を見ると恐れや怖さをぼくは感じる。同時に郷愁も感じる。それらは、自然に対してぼくたちが抱く原初的な感情なのかもしれない。

 この公園のお隣、東京ディズニーランドに入れば、エンターテインメントを徹底的に追求して人の手を入れた結果、海辺特有の諸々は奇麗に拭い去られている。いい悪いの問題ではない。でも、ここから海越しに眺めていると、どこか刹那的な雰囲気が醸し出される。明るくすればするほど、何も変わらぬ海との対比が際立ってくる。

 葛西臨海公園も、展望ビルや、観覧車、水族館まであって、エンタメ面も追求されてはいるが、あくまで、海と陸地とのつなぎを、丁寧な筆の運びで、さりげないグラデーションになるよう作られた公園だと思う。圧倒的な海の光景を活かすべく敷地が取られ、そこにこしらえられた公園にも、木々や草花の自然が繁茂できる余白をたっぷりと取ったような、バランスの良さを感じる。

 青からゆるやかにみどりへと変わる、海と陸地のきわで目に入ってくる光景は、どれも、ざらりとした感触のフィルムで見ているようだ。海辺の公園は、ぼくたちがそれぞれに持っている昔、たしかにそこにいたことがあるような懐かしい景色を再現してくれる、日常から少しずれた、現実感がわずかにうすれた場所にあるのかもしれない。

 そうだとすれば、夕暮れまで、ここの草はらに座っていたい。そして、心の動きや、浮かぶ言葉に耳澄ませ、身をゆだねてみたい。

 ちなみに江戸川区は子供が1日遊べる公園が数多い。葛西臨海公園のわりと近くにある区立総合レクリエーション公園はその代表的な存在で、広大な敷地は明るさに満ちている。ボート乗り場やポニーライド、そして見事な花壇がそこここに点在するこの公園もぼくは大好きだ。当たり前だけど、住む人の中に時間をかけて根付いた場所は楽しいのだ。

 ♣♣♣

葛西臨海公園(かさいりんかいこうえん)
*所在地:江戸川区臨海町6-2-1
*アクセス:JR京葉線「葛西臨海公園」下車 徒歩1分/地下鉄東西線「西葛西」(T16)・「葛西」(T17)から 都バス 葛西臨海公園行き 約15分/「両国」から東京水辺ライン(水上バス) 約80分
*その他付帯設備:葛西臨海水族園(TEL03-3869-5152)●開園時間:9:30~17:00(入園は16:00まで)/●休園日:毎週水曜日(水曜日が祝日・都民の日にあたる場合は、その翌日が休園日)、12月29日〜翌年1月1日/●入園料:一般700円、中学生250円、65歳以上350円。団体割引等あり。ホテルあり(ホテルシーサイド江戸川 TEL 3804-1180)。海に面して人工的に作られたなぎさの公園、葛西海浜公園あり。

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆   この公園でひとり一日過ごして楽しめるようなヒトこそ、公園の達人だと思います。ほんと気持ちいいんだから。
*ふたり: ☆☆☆ この公園でふたり一日過ごして楽しめるようなカップルこそ、いいカップルに違いない、と個人的には思います。
*おおぜい:☆☆☆ 休日は家族連れがたくさん来ます。橋を渡って渚で水遊びが出来るし、東側ではバードウォッチングが楽しめます。
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by na2on | 2010-04-19 21:31 | 公園案内。


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