2010年 04月 20日
浜離宮恩賜庭園  箱庭東京。
 浜離宮は、時の徳川将軍によって作り出された庭園だ。

 岬の突端を埋め立てて作られた庭園の先には、当時、海しか見えなかった。時を経た今、庭園の向かいには拡張を重ねた人工島、月島が目の前に迫り、倉庫や高層住宅が建ち並んでいる。海辺の無機質な景観の中で、ここだけが異質なまでに、丹精を込めて作られたみどりと水のコントラストを味わえる場所として、ぽつんと残されている。

 そんな庭園の正面玄関、大手門から中に入る。広場を越えて、内堀を渡ると花畑が目の前に広がる。その横に作られた、真ん中に大きな木が1本そびえる草はらに、ぺたんと腰をおろすのは、個人的にとても好きな時間だ。菜の花をはじめとして、折々の花が咲く花畑とその背後に建つクラシックな造船会社のビルをながめる位置に座ると、よく出来た箱庭の中にいる気分になる。

 精緻であたたかで、すみずみにまで目を向けたくなる楽しい箱庭。その中を歩いてみよう。

 花畑を抜けると、高さをそろえられたチャーミングな梅林、そこを越すと水上バスの発着場。直角に曲がって、そのまま海沿いを歩いて、東京湾をのぞむ小高い丘。向こうにレインボーブリッジをのぞむ丘を下って橋を渡ると、芝生に囲まれた海水を引き込んだ潮入りの池が眼前に広がる。

 御茶屋の日本家屋が、背後の汐留の高層ビル群を水面に映した池に浮かぶ光景は、奇妙にバランスの取れた美しさを持つ。和と洋、伝統と革新、自然と人工、様々な要素を併せ持つ都市空間をシンボライズする光景だ。

 このコースが庭園の「陽」というべきものだとすれば、それほど広くはない敷地内に2つもある鴨場と呼ばれるかつて鴨猟のために作られた池の周辺は、森の気配を漂わせた「陰」の部分を受け持つ。

 花畑前の草はらを横切って奥の木立に入ると、すぐに光がさえぎられる。ひやりとした空気がたちまちあたりにただよい、途切れなく聞こえていた自動車の音も木々にさえぎられる。重なる木々の間から水面が見え、その先に東京タワーの先端部が顔を見せる。うすぐらい場所から見る鉄塔は、昼のまぶしい光を浴びて、しらっちゃけた空との境目がはっきりしない。

 もうひとつの秘密めいた場所にある鴨場の池も訪れてから、木立の間を抜けて、再び、潮入りの池に戻ってみる。なだらかな景色が、木立を越えると同時に、いちどきに広がり、そのまぶしさに一瞬目をつぶってしまう。目が慣れてからもう一度見渡してみると、光差す海の先に建つ月島の高層住宅を背景にした芝生を、浅草発の水上バスから上陸したとおぼしき人々がゆらりゆらりと歩く。潮入りの池は、そのおだやかな水面に、都市の建造物を映し込むことに余念がない。

 かつてこの都市を作り出した為政者が自分たちのためにこしらえた庭園は、隅々まで計算され尽くされた自然がひろがる都心の庭園として、今も人を魅了する。

 そんな都市の中の箱庭的庭園から、ぼくたちは、自然越しに、人工的に作り上げられた都市を想像の目で見上げる。

 するとまた、都心もまた、大きな箱庭のように感じてくる。陰陽併せ持ちながら、丁寧にあるいは雑多に並べられた多色刷りのビルや車や木々、そして人々。公園は、箱庭の中に作られた箱庭なのかもしれない。

 だとしたら、ぼくにとって、箱庭・トウキョウは、公園とおんなじ。いつだってぼくをひきつけ、その仕組みを知りたいと思わせる場所なのだ。

 ♣♣♣

浜離宮恩賜公園(はまりきゅうおんしこうえん)
*所在地:中央区浜離宮庭園1-1 TEL03-3541-0200(浜離宮恩賜庭園サービスセンター)
*開園時間: 9:00〜17:00(入園は16:30まで)
*休園日: 年末・年始 (12月29日〜翌年1月1日まで) ※イベント開催期間及びGWなどで休園日開園や時間延長が行われる場合もあり。
*入園料: 一般及び中学生300円、65歳以上150円、小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料。団体割引等あり。 *みどりの日(5月4日)、都民の日(10月1日)は入園無料。
*アクセス: <大手門口>地下鉄大江戸線「築地市場」(E18)「汐留」(E19)・ゆりかもめ「汐留」下車 徒歩7分 /JR・地下鉄銀座線・地下鉄浅草線「新橋」(G08・A10)下車 徒歩15分/<中の御門口>地下鉄大江戸線「汐留」下車10番出口 徒歩5分 JR「浜松町」下車 徒歩15分/水上バス(日の出桟橋─浅草)東京水辺ライン(両国・お台場行)「浜離宮発着場」下船

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆☆ 園内を散策するにはちょうどいい広さと言えるでしょう。お昼休みに、お花畑横の芝生でご飯を食べるとなごみます。
*ふたり: ☆☆☆ 浅草並木の薮あたりで蕎麦なぞいただいてから水上バスで隅田川を下って浜離宮へ。最高のデートコースでしょう。
*おおぜい:☆☆  上のコースは、遠方からの友人や家族にも喜ばれると思います。シメは汐留あるいはちょっと足を伸ばして銀座ナイトを。
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by na2on | 2010-04-20 00:06 | 公園案内。


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