2010年 04月 23日
荒川区は、鮮烈な下町テイストを持った町を抱える区だ。日暮里の駄菓子問屋街は再開発で消えてしまったが、それでもなお、いい具合の風景が数多く残っている。そんな区の真ん中を横切っているのが、都電荒川線だ。 終点の三ノ輪橋を降りると古めかしい商店が立ち並んだアーケード街だ。鰻の蒲焼やヌカ味噌の匂いが立ちこめ、その横にアッパッパ的な商品をぶら下げた服屋があっておばちゃんたちで混みあっている。 ここら辺は昔から裁ちばさみや和竿など和物関係の職人が数多く住む町で、今も数こそ少なくなったが、それぞれの分野で一流と称される職人たちが残っている。彼らは、昔からの手作業の精度を上げ、更に商品を現代の需要に合わせるべく試行錯誤を繰り返して、現在の地位を築き上げている。 「手作りって懐かしいよね~」という見世物めいた世間の見方には笑って応えながら、そこから遠く離れたレベルでしたたかに生き残っているのだ。そんな町の商店街に、蒲焼屋が多いのは、手っ取り早く精を付けたい職人が、漬物を売るお店が多いのは、職人である亭主の仕事を手伝いながら家族のご飯を手早く作らなきゃならないオカミさんが数多くいた名残かもしれない。 荒川自然公園は、三ノ輪橋から少し戻った荒川二丁目駅を降りてすぐの所にある。自然公園と銘打っているが、三河島水再生センターという下水処理場の上に作られた公園である。貯水池の上に作られた公園は23区内に数多くあるが、白鳥が休む池もある人工地盤とは思えない風情や、お年寄りから子供まで集うにぎやかさ、そして三ノ輪商店街をそばに控えた立地を含めて、ここの魅力は頭一つ抜け出しているような気がする。 駅からだらだら坂を登ったところに池のある庭園があり、そこにはお年寄りなぞが静かにベンチでなごんだりしている。その先へ行くと遊具が並ぶ児童遊園が、そして奥には交通園があり、都電の踏切の音をややマイルドにしたニセ踏切がせわしなく上下する中を地元の子供たちが(足こぎ式)ゴーカートで爆走している。その傍らのベンチでスケッチブックを広げるおじさんなんぞもいて、この公園の年齢層は幅広い。 ここいらは下町なんて言いながらも、川向こうには巨大なマンションが並ぶ。この公園は長い歴史を持つ町並みの中では新しく出来た部類に入るだろう。集っている人たちも、昔からの家の人と、新しいマンションに住む人が混ざっているようだが、それぞれが適当に遊んでいる。要するに、この公園は新旧でうまいこと融合している場所だ。 元からここに住む人たちは、変化する町並みについて聞かれたら「昔の風情がなくなって」なんて相手が喜びそうなことを言いながら、本当はそんな変化を楽しんでいるんじゃないかとさえ思う。 職人さんじゃないけど、東京に古くから根付いている人たちは、したたかで、柔軟で、格好いい。 ♣♣♣ 荒川自然公園(あらかわしぜんこうえん) *所在地:荒川区荒川8-25-3 TEL03-3803-4042(公園管理事務所) *開園時間:6:00~19:00(5月~9月)、7:00~19:00(3月~4月、10月~11月)、7:00~17:00(12月~2月) *休園日:毎週月曜日、12月29日~1月3日 *アクセス:都電荒川二丁目駅下車すぐ。 ミシュラン(☆3つが最高) *ひとり: ☆☆ 定番ですが、都電沿線は散策するにはもってこい。この公園で夕暮れを眺めるなんて乙です。 *ふたり: ☆ この空中庭園を歩くカップルをモデルに気の利いた恋愛小説ができそうな感じではあります。 *おおぜい:☆☆ 家族で、あるいは家族同士で遊ぶには最適。都電沿線なら尾久の原公園も広くておすすめです。
by na2on
| 2010-04-23 21:10
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