2010年 04月 30日
日比谷公園 風に吹かれて。
 ここは東京で初めて出来た公園である。

 明治に入って、日本に西洋の文化がものすごい勢いで入ってきたことに呼応して、都心に公園を作る運びとなった。その場所として選定されたのが、皇居にほど近い日比谷であり、いち早く西洋文化を自らのものとした設計家が西洋庭園をベースとした図面を引いた。

 当時の企画書には、その設立趣旨として、庶民の休日の遊びは寄席に行くぐらいで西洋に比べてすごくみっともない。西洋人みたいに戸外で活発に運動して体格を良くするべきで、庶民レベルからそういうことをしとかないと西洋人に馬鹿にされてしまう、という意味のことが書かれてある。

 早い話、西洋人は背が高くてカッコ良くて、それに比べて自分たちのことがすごくカッコ悪いと思いこんで、慌ててあちら風の庭園を造ってしまったのである。田舎者が表参道とか代官山に行って雑誌で調べたお店で恐る恐る洋服一式を買うようなノリだ(ごめんね明治政府)。

 まあ、田舎者だったら、後年になって、いやー恥ずかしかったで笑えるが、自らを否定するかのごとく急速に欧米化を進めたあげく、今度は彼らと戦争まで始めてしまった国家の話となると、ちょっと笑えない。

 現在の日比谷公園には、長方形の園内のあちこちにサラリーマンをはじめとする人々が集っている。一角の野外大音楽堂にコンサートで行った人も多いだろう。夏の夜にここでお気に入りの音楽を聞くのは、まさに至福の時間だ。

 この小体の公園は、慌てて造ったにも関わらず、しっかりとした設計がなされている。明治から平成にかけての長い時間に洗われ、時代の風に吹かれることで、その素性の良さが際立ってきているような気がする。明治期の人々の情熱の深さと努力ぶり、そしてセンスの良さは、歴代の日本の歴史の中でもかなり突出していたのではなかろうか。

 もう一度、そんな明治期に戻る。立派な意義もあり是非公園を造ろうとなったが、当局の頭を悩ませる問題があった。人々が集会をする格好の場所を提供することになるのだ。いつの世でも為政者たちは民衆が集まって決起するのを警戒する。公園には交番が設けられることとなった。

 これは予防という面だけではなく、集会しやすい場所であることを逆手に取って、集合した人々をこの交番でチェックして、要注意人物としてマークするという目的もあったそうだ。

 以前、あるデモに参加しようと集合場所の日比谷公園へと赴いた。冷たい風の吹きすさぶ真冬の公園に着くと、ものすごい数の人がいて、彼らは全員デモ参加者だった。

 ぼくの傍らではゼンキョウトウ的な現役の学生たちがひとりひとり「ワレワレハァ」と宇宙人が地球に来訪したときみたいな喋り方で、恥ずかしそうに演説していた。それを見ながら笑いつつ、ネットで同時中継をしようとしていた若者は、結局その放送がうまく行かないことをかかってきた電話で告げられしょんぼりしていた。どうやら人数は多いけど、人々のデモにかける思いの温度差は大きそうだった。

 そんなでこぼこの人々の行進はしかし、公園から外に出たところでしっかり公安の方々のビデオに記録された。当局の目論み通りである。

 季節はずれの屋台を出していたおっちゃんは、予想を遥かに超えた人出にゴキゲンだった。

「デモってすげえ人が集まるんだねえ」と彼は感心しながらワンカップを手渡した。「寒いから、体の中からあっためてさ、まあがんばんな」

「うん。よくわからんけどがんばるわ」とぼくが言ったらおっちゃんはニカッと笑った。

 ♣♣♣

日比谷公園(ひびやこうえん)
*所在地:千代田区日比谷公園
*アクセス:地下鉄丸の内線・千代田線「霞ヶ関」下車 徒歩2分/地下鉄日比谷線「日比谷」下車 徒歩2分/JR「有楽町」下車 徒歩8分。

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆  ここは素敵な施設の多い公園でもあります。まず、北端にあるオープンカフェ。ここで飲むビアーはおいしいです。
*ふたり: ☆☆  そして真ん中にある松本楼。銀座の街角から移植した大木を見つつコーヒーを飲むひとときは最高に気持ちいいです。
*おおぜい:☆☆  最後に野音(大音楽堂)。夏の夕暮れに音楽をここで聞く至福と言ったら! ガーデンウェディングもできるそうです。
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by na2on | 2010-04-30 22:54 | 公園案内2


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