2010年 05月 02日
若洲海浜公園 ずれてゆく。
 公園へ向かうバスは、がたごとと倉庫街を走って行く。だだっ広い草地の中に無愛想な建物がぽつんぽつんと立つ景色は、大きなトラックがその建物から出入りすることで、かろうじて現実とのつながりを保っている。

 倉庫群の向こうには、午後の光に照らされた巨大な風車がそびえている。そこの下がバスの終点だ。降りると、海へと向かう先にキャンプ場が広がる。シーズンオフの時期、そこにはまるで人の気配がしない。手入れされた芝にぽつんぽつんとキャンプ施設が置かれている景色は噴火で埋まってしまったかつての街の遺跡を歩いているようだ。

 先の岬に出て、若洲ゴルフリンクの周りをぐるりと取り囲むようにして広がるのが、長いサイクリングコースだ。

 ぼくがはじめてここを訪れた時は、冬の夕方だった。岬には海釣りに来た人々が大勢いたが、サイクリングコースには誰もいない。自転車の貸し出しの時間が終わっていたので、ぼくは歩くことにした。左手にゴルフ場、右手に海、その間の緑地帯の真中を舗装された細い道が、ただ延びる。

 途中にブランコが置かれた小さな広場があるが、海を向いて置かれたブランコが、いつ来るとも分からない誰かのために、たたずんでいる。最後に人を座らせたのは、いつのことだろう。少なくともオフシーズンに海辺の道を歩く人は皆無に等しい。

 海からの風が吹き付ける中を歩いていると、自分の体臭やぬくもりが吹き飛ばされていくような気がしてくる。そしていつしか、自分の足音だけが、現実世界と自分を結びつけるような気になってくる。止まることが怖い。だから、ぼくは、『パリ、テキサス』の主人公のように、ただひたすら、歩き続ける。

 日が落ちてきて、海を隔てた向こうの葛西臨海公園の観覧車に明かりがともる。更に向こうのディズニーリゾートが煌煌とライトに照らし出される。幻想的な光景だが、それは逆にひどく現実的なものとして、ぼくの目に入りこんできて、少しだけほっとさせる。それらがなければ、ここには人の気配を感じさせるものがないからだ。

 誰もいない海辺の公園は、現実感が少しだけずれている。そこに足を踏み入れる感覚は、どこか秘密めいていて、何かぼくたちの知らないところで、大事なことが行なわれているような気もしてくる。

 時々、ここのキャンプ場や、ブランコのことを思い出す。そしてぼくは、倉庫街を抜けた場所にある広い公園に、無性に行きたくなってくる。

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若洲海浜公園(わかすかいひんこうえん)[区立若洲公園も含む]
*所在地:江東区若洲3-2-1 TEL03-5569-6701(若洲公園キャンプ場サービスセンター)
*アクセス:JR、地下鉄有楽町線、臨海副都心線「新木場」下車 都バス若洲キャンプ場行き終点「若洲キャンプ場前」下車(約15分)。

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆  風車のごんごん回る音が響く公園は、わびしい雰囲気もあり。夜間は道が閉鎖されるので注意を。
*ふたり: ☆   近くのヘリポートから遊覧ヘリに乗るのも一興。夜は深川や門前仲町あたりで遊ぶのも乙です。
*おおぜい:☆☆  暖かく晴れた日の海辺の芝生は最高。バーベキューやサイクリングや釣りをたっぷり楽しめます。
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by na2on | 2010-05-02 04:24 | 公園案内2


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