カテゴリ:公園案内。( 12 )

2010年 04月 21日
善福寺川緑地/和田堀公園 君がいるところ。
 個人的なことだが、ぼくはこの公園のわりと近くに住んでいたこともあって、当時は頻繁に通っていた。早くに目が覚めたから、天気がいいから、特に用事もないから、と、公園に行く理由はいくらでもあった。

 公園に行くと様々な人とでくわした。朝行けばジョギングをする人や詩吟をうなる人。昼行けば寝転がる人や太鼓を叩く人、詩吟をうなる人。夜行けばタバコを吸ってたたずむ人や詩吟をうなる人。何だかうなる人ばかりのような感もあるが、実際かなりの確率でうなり声を聞いた。多分ひとりかふたりなんだろうけど姿はついぞ見たことがない。

 川沿いのある家の前にはダンボールが置かれ、奇天烈な書体で「10円」とか「100円」と書かれた値札が下げられていた。中には自転車のサドルとか、ネジといった不思議な商品群に混じって唯一まっとうな商品としてテニスボールが並べられている。テニスボールは常にたっぷりと用意されているが、そこに立った我々はすぐそばにテニスコートがある事実を確認し、ここで100円で売られている少し使い込まれたテニスボールがどこで仕入れられたかについて、思いを馳せざるを得ない。

 奇天烈な書体の書き手と思しきおじさんは、午後になると川に餌を投げ込む。カモが集まり、たちまち阿鼻叫喚の様相を示す。かわいいねえと、この餌を買うお金(つまりテニスボールの収益金だ)がどういう流れで生まれてきたのかを知らない無知なギャラリーが集まると、どこからかやってきたもうひとりのおじさんが来て囁く。

「このカモたちはね、夜になるとお台場にあるねぐらに帰るんだよ」

 カモに付いていって見たのかよ、という素朴な疑問を投げかける間もなく、彼は別のギャラリーのところへ行って「夜はお台場」を繰り返す。その目的は不明だ。

 少し昔には、この公園の周辺は、うっそうと茂る森や緑地が続く渓谷で、子供たちの格好の冒険遊び場だったそうだ。整備が進み、芝生や遊具やグラウンドが点在する今でも、渓谷だった頃の片鱗は確かに感じ取ることができる。かつて大自然を彷彿とさせるだけの、余白がそこかしこに残っているのだ。

 木々が気ままに生い茂る余白の残った、川沿いのこの緑地に、近隣の人たちは、何かと集まって、思い思いの諸々を表現したり、放出していた。

 あるとき、公園の整備のピッチが急に上がった。その直後、ぼくは引っ越して郊外に移ってしまって、この公園から足が遠のいてしまった。

 ただ、この公園が、他でもよく見る、芝生が刈り揃えられたこぎれいな緑地となったとしても、現、旧いずれの少年少女も、変わらずに集って、なにやらイケてる遊びにいそしんでいるだろう。

 詩吟やお台場はもとより、夏の日の夕暮れに見た、打ち捨てられたような野球場でノック練習にいそしんでいた少年たちや、草はらに主人たちに連れて来られて互いに匂いを嗅いだり、走り回ったりしていた犬たちは、変らず元気にやっていくだろう。だって、ここはいつだって、皆の集う場所なのだから。

 ぼくは、ここの近所に住んで、我が家の庭のように足しげく通った。ここで過ごすひとときがとても大切だった。ここで見かけた人や動物を隣人として親近感を抱いた。公園は、ただそこに存在し続け、ぼくたちを受け入れ、ぼくはたくさんのものごとを体感してきた。そうやって、ぼくは、東京に住む、ということを、実感していった。

 あなたの近所に、いい公園はありますか、とぼくは聞きたい。もうあればラッキー。無ければ探せばいい。東京にはたくさんいい公園がある。見つかったら、そこに通いつめればいい。

 気の利いたカフェやパン屋を近所に見つけるように、そうやって、ぼくたちは少しずつその土地に根をおろして行くのだと思う。

 ♣♣♣

善福寺川緑地/和田堀公園(ぜんぷくじがわりょくち/わだぼりこうえん)
*所在地:杉並区成田西1-30-27
*アクセス:京王井の頭線「西永福」「浜田山」下車 徒歩15分/関東バス(JR中野駅─吉祥寺駅)「善福寺川緑地公園前」下車/京王バス、関東バス(京王井の頭線「永福町」駅-松ノ木住宅経由-JR「高円寺」駅または地下鉄丸の内線「新高円寺」(M03)駅行)「都立和田堀公園」下車

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆  ひとり東西に長い公園を散策するといろんなものが見えてきます。かつては前川國男設計の阿佐ヶ谷住宅も公園そばにありました。
*ふたり: ☆☆☆ 散歩したり、和田堀にある釣り堀で遊んだり、大宮八幡を参拝したり、ワビサビの利いたひとときを楽しめること請け合います。
*おおぜい:☆☆☆ 暖かい季節は園内あちこちでお弁当を広げたりする人が見受けられます。遊具もそこここにあるので子連れも楽しめる公園です。
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by na2on | 2010-04-21 06:36 | 公園案内。
2010年 04月 20日
浜離宮恩賜庭園  箱庭東京。
 浜離宮は、時の徳川将軍によって作り出された庭園だ。

 岬の突端を埋め立てて作られた庭園の先には、当時、海しか見えなかった。時を経た今、庭園の向かいには拡張を重ねた人工島、月島が目の前に迫り、倉庫や高層住宅が建ち並んでいる。海辺の無機質な景観の中で、ここだけが異質なまでに、丹精を込めて作られたみどりと水のコントラストを味わえる場所として、ぽつんと残されている。

 そんな庭園の正面玄関、大手門から中に入る。広場を越えて、内堀を渡ると花畑が目の前に広がる。その横に作られた、真ん中に大きな木が1本そびえる草はらに、ぺたんと腰をおろすのは、個人的にとても好きな時間だ。菜の花をはじめとして、折々の花が咲く花畑とその背後に建つクラシックな造船会社のビルをながめる位置に座ると、よく出来た箱庭の中にいる気分になる。

 精緻であたたかで、すみずみにまで目を向けたくなる楽しい箱庭。その中を歩いてみよう。

 花畑を抜けると、高さをそろえられたチャーミングな梅林、そこを越すと水上バスの発着場。直角に曲がって、そのまま海沿いを歩いて、東京湾をのぞむ小高い丘。向こうにレインボーブリッジをのぞむ丘を下って橋を渡ると、芝生に囲まれた海水を引き込んだ潮入りの池が眼前に広がる。

 御茶屋の日本家屋が、背後の汐留の高層ビル群を水面に映した池に浮かぶ光景は、奇妙にバランスの取れた美しさを持つ。和と洋、伝統と革新、自然と人工、様々な要素を併せ持つ都市空間をシンボライズする光景だ。

 このコースが庭園の「陽」というべきものだとすれば、それほど広くはない敷地内に2つもある鴨場と呼ばれるかつて鴨猟のために作られた池の周辺は、森の気配を漂わせた「陰」の部分を受け持つ。

 花畑前の草はらを横切って奥の木立に入ると、すぐに光がさえぎられる。ひやりとした空気がたちまちあたりにただよい、途切れなく聞こえていた自動車の音も木々にさえぎられる。重なる木々の間から水面が見え、その先に東京タワーの先端部が顔を見せる。うすぐらい場所から見る鉄塔は、昼のまぶしい光を浴びて、しらっちゃけた空との境目がはっきりしない。

 もうひとつの秘密めいた場所にある鴨場の池も訪れてから、木立の間を抜けて、再び、潮入りの池に戻ってみる。なだらかな景色が、木立を越えると同時に、いちどきに広がり、そのまぶしさに一瞬目をつぶってしまう。目が慣れてからもう一度見渡してみると、光差す海の先に建つ月島の高層住宅を背景にした芝生を、浅草発の水上バスから上陸したとおぼしき人々がゆらりゆらりと歩く。潮入りの池は、そのおだやかな水面に、都市の建造物を映し込むことに余念がない。

 かつてこの都市を作り出した為政者が自分たちのためにこしらえた庭園は、隅々まで計算され尽くされた自然がひろがる都心の庭園として、今も人を魅了する。

 そんな都市の中の箱庭的庭園から、ぼくたちは、自然越しに、人工的に作り上げられた都市を想像の目で見上げる。

 するとまた、都心もまた、大きな箱庭のように感じてくる。陰陽併せ持ちながら、丁寧にあるいは雑多に並べられた多色刷りのビルや車や木々、そして人々。公園は、箱庭の中に作られた箱庭なのかもしれない。

 だとしたら、ぼくにとって、箱庭・トウキョウは、公園とおんなじ。いつだってぼくをひきつけ、その仕組みを知りたいと思わせる場所なのだ。

 ♣♣♣

浜離宮恩賜公園(はまりきゅうおんしこうえん)
*所在地:中央区浜離宮庭園1-1 TEL03-3541-0200(浜離宮恩賜庭園サービスセンター)
*開園時間: 9:00〜17:00(入園は16:30まで)
*休園日: 年末・年始 (12月29日〜翌年1月1日まで) ※イベント開催期間及びGWなどで休園日開園や時間延長が行われる場合もあり。
*入園料: 一般及び中学生300円、65歳以上150円、小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料。団体割引等あり。 *みどりの日(5月4日)、都民の日(10月1日)は入園無料。
*アクセス: <大手門口>地下鉄大江戸線「築地市場」(E18)「汐留」(E19)・ゆりかもめ「汐留」下車 徒歩7分 /JR・地下鉄銀座線・地下鉄浅草線「新橋」(G08・A10)下車 徒歩15分/<中の御門口>地下鉄大江戸線「汐留」下車10番出口 徒歩5分 JR「浜松町」下車 徒歩15分/水上バス(日の出桟橋─浅草)東京水辺ライン(両国・お台場行)「浜離宮発着場」下船

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆☆ 園内を散策するにはちょうどいい広さと言えるでしょう。お昼休みに、お花畑横の芝生でご飯を食べるとなごみます。
*ふたり: ☆☆☆ 浅草並木の薮あたりで蕎麦なぞいただいてから水上バスで隅田川を下って浜離宮へ。最高のデートコースでしょう。
*おおぜい:☆☆  上のコースは、遠方からの友人や家族にも喜ばれると思います。シメは汐留あるいはちょっと足を伸ばして銀座ナイトを。
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by na2on | 2010-04-20 00:06 | 公園案内。
2010年 04月 19日
葛西臨海公園 いつかどこかで。
 駅を降りて、まっすぐのびる広い道を歩いてゆくと、海辺に面した崖の端に建つビルにいきあたる。全面ガラス張りの、向こう側が透けて見える建物の階段を、いちばん上までのぼる。すると、眼下に草はらと、砂浜、その向こうに海が広がる景色がガラスの先に広がる。海の向こうには工場地帯の煙突、左にはうっすらと房総の山々が姿を見せる。

 真下に目線を移し、草はらで走り回る子供や犬を眺めていると、既視感におそわれる。いつか、どこかで見たような景色だが、どこでだったか思い出せない。思わず階段を降りて、あたかも今まで見ていた映像の中へ自らが入って行くような心持ちになって、草はらに立つ。何種類かの草花を混ぜて作られた広い草はらを踏みしめながら、横切ってゆく。

 片隅に作られた丹精にこしらえられた花畑の向こうには、観覧車がひとつ、空に向かってそびえる。海を振り返って見てから木々の中へのびる小道に入ると、森のあの静かな空気に包まれる。ぽっかりと開いた人気のない緑地には、小川が流れ、忘れ去られたような小さな橋がかけられている。

 この公園を歩くと、いつかどこかで見たような場面が、ひそやかに連なってゆく。切ないような心象風景が、現実に描かれている感覚である。

 ぼくは公園の魅力のひとつに、自然と人間のせめぎあいのバランスがあると思っている。公園にある自然は、あくまで人の手によって管理された自然だ。しかし自然の意思のようなものは残っている。その野生の部分の残り具合で公園は魅力的になったり、つまらないものになったりする。

 ところが、海辺の公園に来ると、人工的にこしらえられたなぎさの、ずっと先まで広がる海は、やはり、人の手の及ばない自然だという気がする。もちろん、木々や草花や陸地の生き物だって、人間の意思など軽く乗り越える力強さは大いに持ち合わせている。しかし、水は彼ら以上に人の意思を寄せ付けない。

 海を見ると恐れや怖さをぼくは感じる。同時に郷愁も感じる。それらは、自然に対してぼくたちが抱く原初的な感情なのかもしれない。

 この公園のお隣、東京ディズニーランドに入れば、エンターテインメントを徹底的に追求して人の手を入れた結果、海辺特有の諸々は奇麗に拭い去られている。いい悪いの問題ではない。でも、ここから海越しに眺めていると、どこか刹那的な雰囲気が醸し出される。明るくすればするほど、何も変わらぬ海との対比が際立ってくる。

 葛西臨海公園も、展望ビルや、観覧車、水族館まであって、エンタメ面も追求されてはいるが、あくまで、海と陸地とのつなぎを、丁寧な筆の運びで、さりげないグラデーションになるよう作られた公園だと思う。圧倒的な海の光景を活かすべく敷地が取られ、そこにこしらえられた公園にも、木々や草花の自然が繁茂できる余白をたっぷりと取ったような、バランスの良さを感じる。

 青からゆるやかにみどりへと変わる、海と陸地のきわで目に入ってくる光景は、どれも、ざらりとした感触のフィルムで見ているようだ。海辺の公園は、ぼくたちがそれぞれに持っている昔、たしかにそこにいたことがあるような懐かしい景色を再現してくれる、日常から少しずれた、現実感がわずかにうすれた場所にあるのかもしれない。

 そうだとすれば、夕暮れまで、ここの草はらに座っていたい。そして、心の動きや、浮かぶ言葉に耳澄ませ、身をゆだねてみたい。

 ちなみに江戸川区は子供が1日遊べる公園が数多い。葛西臨海公園のわりと近くにある区立総合レクリエーション公園はその代表的な存在で、広大な敷地は明るさに満ちている。ボート乗り場やポニーライド、そして見事な花壇がそこここに点在するこの公園もぼくは大好きだ。当たり前だけど、住む人の中に時間をかけて根付いた場所は楽しいのだ。

 ♣♣♣

葛西臨海公園(かさいりんかいこうえん)
*所在地:江戸川区臨海町6-2-1
*アクセス:JR京葉線「葛西臨海公園」下車 徒歩1分/地下鉄東西線「西葛西」(T16)・「葛西」(T17)から 都バス 葛西臨海公園行き 約15分/「両国」から東京水辺ライン(水上バス) 約80分
*その他付帯設備:葛西臨海水族園(TEL03-3869-5152)●開園時間:9:30~17:00(入園は16:00まで)/●休園日:毎週水曜日(水曜日が祝日・都民の日にあたる場合は、その翌日が休園日)、12月29日〜翌年1月1日/●入園料:一般700円、中学生250円、65歳以上350円。団体割引等あり。ホテルあり(ホテルシーサイド江戸川 TEL 3804-1180)。海に面して人工的に作られたなぎさの公園、葛西海浜公園あり。

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆   この公園でひとり一日過ごして楽しめるようなヒトこそ、公園の達人だと思います。ほんと気持ちいいんだから。
*ふたり: ☆☆☆ この公園でふたり一日過ごして楽しめるようなカップルこそ、いいカップルに違いない、と個人的には思います。
*おおぜい:☆☆☆ 休日は家族連れがたくさん来ます。橋を渡って渚で水遊びが出来るし、東側ではバードウォッチングが楽しめます。
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by na2on | 2010-04-19 21:31 | 公園案内。
2010年 04月 18日
向島百花園 まあお茶でも。
 向島百花園は、散策好きが特に好むような一帯にあります。隅田川沿いの長命寺桜もちや言問団子を食べてから、玉の井をぶらぶら歩き、向島百花園へ、さらに、京島の商店街を見る、というコースで1日楽しむことが多いようです。

 長命寺桜もちを始めとする玉の井周辺のお店の菓子は、こざっぱりとした甘味を持っていて、好感がもてますし、京島周辺のうねうねとくねった路地を歩き回って、道に白墨で描かれた丸(ケンケンパの)を見たりすると、本当にタイムスリップしたような気になります。

 実際にそんな時代や、場所に住んだことがないのですが、まさにイメージの中にある「昔風」な街並みにしびれて、ぼくは何日かここへ通い、航空写真でここら辺一帯を目を皿にして眺めたのですが、そんなくらいでは到底見尽くせない奥深さはある街と言えましょう。まあ、どこであろうと余所者である限りその街のキモのような部分を知るのは無理だと判ってはいるのですが。

 百花園は、あたりの街並みと呼応するような気易さを持つ庭園です。

 もともと江戸時代に、通人たちが民営の花園として作り上げたというここは、将軍や大名の持ち物だった他の庭園とひと味違った、道行く人にこんにちは、と声をかけてくれるような気の置けない雰囲気があります。10分もあれば回れる小さな庭園内は、季節ごとに様々な花が咲き、いつ行ってもほんのりとした気分に浸れます(ちなみに名物の萩のトンネルは9月頃が見ごろになります)。まさに和菓子を食べて、ぶらぶら歩いて、この公園で一休みするにはうってつけ、といった庭園と言えましょう。

 何度も書くように、公園と周辺の街の雰囲気は密接に関わっています。

 この庭園は、墨田区の京島、玉の井の境目にあるからこそ、魅力が何層倍かになっていると改めて思います。こまごまとした家や店が立ち並ぶ街の、ともすれば見逃しそうな一角にひっそりと息づいている庭園は、ここらへんに住む人たちの庭に見立てるとちょうどいいのかもしれません。和菓子屋さんは、応接室。余所からここいらを訪れた人たちは、とりあえず、お菓子をいただいてから、今度は、丹精込めて咲かせたご自慢の花咲く小さな庭を見せてもらう、というおもてなしをしてもらっているわけです。過ごしやすい日だったら、お菓子をここのベンチでいただいてもいいかもしれません。

 そう考えると、なんだか、庭園の木製ベンチが、自分たちの祖父母の家にあった濡れ縁のような、ちょっと懐かしいにおいのする、親密で親しいものに感じてきます。

 墨田区には他にも素敵な公園があります。中でも百花園を訪れたら、足をのばして寄っておきたい公園。京島のうねうね曲がった路地に忽然と現れる京島南公園は、強烈な滑り台を持っています。多分23区内最高の高さから急角度で一気に降りる格好の滑り台は、ちょっと子供には危ないんじゃないか、と思えるほどのワイルドさを持っています。

 いろんな意味で勇気を出して滑り降りたら、向島橘銀座をそぞろ歩くのもいい感じです。商店街はここらへんに住む人の台所、みたいなものでしょうか。ちょっとご相伴に預かって、おなかもくちくなると、いつの間にか1日が過ぎてしまっています。

 ♣♣♣

向島百花園(むこうじまひゃっかえん)
*所在地: 墨田区東向島3-18-3 TEL03-3611-8705(向島百花園サービスセンター)
*開園時間: 9:00〜17:00(入園は16:30まで)
*休園日: 年末・年始 (12月29日〜翌年1月3日まで) ※イベント開催期間及びGWなどで休園日開園や時間延長が行われる場合もあり。
*入園料: 一般及び中学生150円、65歳以上70円、小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料。団体割引等あり。 *みどりの日(5月4日)、都民の日(10月1日)は入園無料。
*アクセス:東武鉄道伊勢崎線「東向島」下車徒歩約8分/京成電鉄押上線「京成曳舟」下車徒歩約13分/都営バス 亀戸-日暮里(里22)「百花園前」下車 徒歩約2〜3分

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆☆ 都内散歩好きにはたまらない墨東地区の中心ともいえるここでひと休み、ってのがいい感じだと思います。
*ふたり: ☆☆☆ 向島、京島周辺には、気の利いたカフェなぞも点在するように。まるまる一日遊んで飽きさせない地域です。
*おおぜい:☆   付近に駐車場等が少なく、電車の駅からもやや距離があるので、家族連れには少々不向きかもしれません。
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by na2on | 2010-04-18 00:15 | 公園案内。
2010年 04月 17日
代々木公園&明治神宮 正調オアシス 。
 代々木の駅を降りて、南へ向かう。坂道を下って、また登ると、もう明治神宮の森の入り口だ。門番小屋のあるものものしい門を越えて境内に踏み込めば、たちまちうっそうと茂る木立が迫る。見上げると、大木の枝越しに、空が顔をのぞかせる。何かが動く気配を感じて視線を下へやると、向こうの茂みで、ヘビが姿を隠そうとしている。砂利を踏む靴の音が、耳に入ってくる。

 明治天皇をまつるべく作り出された神宮の森の中に一歩入ると「外」の空気から遮断される。そして、深い森の中でだけ味わえる時間がひめやかに始まる。

 木立の中をしばらく歩くと、木々の連なりが突然終わって視界が広がり、池があらわれる。亀や鴨が泳ぐ水面を見つつ、橋を渡ると、今度は、あおあおとした草はらが目の前に広がる。

 木立に三方を囲まれ、北側に宝物殿を控えた草はらには人々があちらこちらに散らばる。彼らとの間には、奇妙な連帯感があるような気がする。都心の中に隠れる小さな草はらの存在を知り、そこでのひとときをこっそり過ごしに来た、という「秘密」を共有している、ちょっとだけ後ろめたい感覚だ。草に寝て空を見ながら見る彼らの動きは遠い日の記憶を再現するかのようにスローモーだ。ここで流れる時間は、外よりほんの少しゆっくりとしている。

 そんな神宮の草はらは、ささくれ立った気持ちは似つかわしくない、都心の中で、ぽっかりと浮かび上がった、おだやかな場所だ。

 ひんやりとする木立の中に再び入って、今度は本殿の方へ向かい、さらに南進すれば、次第にすれ違う人の数も加速度的に多くなってゆき、代々木公園に行き当たる。

 ここは、新宿御苑と並んで、都心を代表する公園だ。

 広い芝生と、池。その奥にさらに広がる芝生と、花畑やドッグラン。桜の木立と芝生が広がる原宿側は、いわば祝祭的な気配が濃厚に漂う場所だ。エコ系の大イベントから、気の合う者同士で騒ぐ春の花見に夏の夕涼み、ひとりでふらりと来て、民族楽器をふがふが演奏することだってオーケイだ。

 田舎者でもそうでなくても、いささか窮屈な都心の中で、この公園は、息を抜くことができる数少ない場所だ。だいたいのことだったら受け入れてくれるここには、常に人々が集い、何かが動いている気配が濃厚だ。

 都心のみどりには、いつだって、どこか祝福されたような空気が漂っている。明治神宮の芝生や代々木公園のみならず、日々の生活と密につながった近所の公園とかにも同じように。

 公園への入り口をくぐり、中へ入った時から、その場所が持つ固有の時間の流れに身をゆだねることになる。普段気づかない音に耳を澄ませる。その時にしか味わうことのできない、空気や風景に、感覚が開いていく。外側とは、時間の流れが違う、つまり自然が力を保つ場所は磁力を持ち、いつの間にか人が集ってくる。そこに行けば、からだとこころがほぐされるから、あるいは自らの思いをありったけ放出できるから。

 そんな東京のみどりを代表するような、神が宿る場所や祝祭的空間が代々木にはある。なんかあったらここへくればいい。誰もが安心できる場所。そんな場所こそ、まさに「都会のオアシス」と呼んでいいように思う。

 ♣♣♣

代々木公園(よよぎこうえん)
*所在地:渋谷区代々木神園町2-1 TEL03-3469-6081(代々木公園管理事務所)
*開園時間:10月16日〜4月30日 5:00〜17:00/5月1日〜10月15日 5:00〜20:00
*アクセス:JR「原宿」・東京メトロ千代田線「代々木公園」下車 徒歩3分/小田急線「代々木八幡」下車 徒歩6分。(明治神宮宝物殿はJR山手線・都営地下鉄大江戸線「代々木」駅、小田急線「参宮橋」駅が最寄り駅)。

ミシュラン(星3つが最高)
ひとり: ☆☆  代々木公園はどんなヒトだって受け入れる度量の広い公園。宝物殿だって、同じくひとりものを受け入れるけど(続く)
ふたり: ☆☆☆ 雪の降った翌日、一面真っ白な芝生でふたりきり遊んでいたカップル。と僕。あのときの僕は明らかに邪魔だったと思う。
おおぜい:☆☆☆ そんな宝物殿前芝生、友達同士や家族で来ている人多数。にしても都心の公園で西欧系の外人家族ってよく見かけますね。
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by na2on | 2010-04-17 05:11 | 公園案内。
2010年 04月 16日
石神井公園 常連になるという贅沢。
 冬には寒々としていた木々の枝に芽が出て、花が咲き、そして一気に若葉が茂るようになり、いつしか赤く色づく。公園の自然は、季節ごとにありようを変えていく。公園は、通ってこそ、その魅力を感じ取れる場所だ。日々の中で少しずつ変わっていくさまを、何度も繰り返し、時間をかけて感じとっていくこと、それが心地よいから、ぼくは公園に行く。

 そんな自然の変化を味わえる場所として、石神井公園は、高いクオリティを持っている。

 池の周りを歩いてみると、2つある池それぞれがほど良い距離のウォーキングコースを持っていることに気が付く。そして、木や草が繁茂し、数多くの生物が生息していることが判る。ひとつひとつをなぞるように確かめていくうちに、少しずつ時間の流れが変化していく。

 ここに集う人たちは、時の移ろいを楽しむ余裕を持つ偉大なる「暇人」が多い、ように思う。

 ある時、歩いていると、大きなカンバスのごく一部分を使って緻密な線画を描いているおじいさんを見つけた。面白い絵だなあと思っていたら、次行ったときもそのおじいさんは気難しい顔をして、同じ場所に座って一心不乱に描き続けていた。覗き込んでみると線画は少しだけ面積を増やしていたが、カンバスを埋め尽くすにはまだまだ時間が、ごく控えめに見て、あと1年は優にかかりそうだった。

 確かに池の周りに生い茂る木々のぼさぼさ度はかなり高い。だから細密画風で描こうとしたら時間はかかるだろうとは思う。でも、それだったら別の題材だって見つけられるはずだ。にもかかわらずおじいさんは、石神井公園にある自分の場所に座ることを続ける。

 しゃべりかけたかったが、その顔は、自分だけの時間を堪能したい、と無言で語っているようにも見えたから、想像でしかない。だが多分、おじいさんの絵がゆっくりしか進まないのは、彼が意識的にそうなるようにしているからだろうと思う。彼は、この公園に、出来る限り通って、そこで時間をゆっくりと過ごしたいのだ。そのために絵を描いているのだ。何かをクリエイトするため、ではない。要するに1年がかりの壮大なる暇つぶしである。

 そんなほんものの遊び人たちに、この公園はとてもやさしい。

 池にはボートがあり、畳に座り込んで木々やカモを眺めながらアルコール摂取可能なお茶屋もあるこの公園は、1日かけて遊べる場所でもある。どこにでもありそうだが、この「なにかしなきゃ」的なあおられ感の希薄さ、ゆるやかさは、この公園にしかないものだ。

 だから、ここに行って帰ってくると、程なくしてまた行ってみたいと思うようになる。同じように感じる人も多いのだろう、この公園には、老若男女問わず常連さんが多いようにも感じる。そして、リピーターが多いのは、いい公園の必須条件のひとつである。

 おじいさんのカンバスには木々が描かれていた。それが最終的に新緑の絵になろうと紅葉の絵になろうと、毎日そこに座って描かれたものには、きっと、ここでしか味わえない時間の流れが編みこまれるだろう。

 石神井公園に集う人たちは退屈の中に転がっている贅沢を見つけ出した人たちなのだ。

 ♣♣♣

石神井公園(しゃくじいこうえん)
*所在地:練馬区石神井台1-26-1
*アクセス:西武池袋線「石神井公園」下車 徒歩7分/西武新宿線「上井草」・JR中央線「阿佐ヶ谷」・JR中央線「荻窪」より「長久保」行き西武バス「三宝寺池」下車/西武新宿線「上井草」・西武新宿線「井荻」・JR中央線「荻窪」より「石神井公園駅」行き西武バス「石神井公園」下車 /西武新宿線「下井草」・JR中央線「阿佐ヶ谷」より「石神井公園駅」行き関東バス「石神井公園前」下車/西武新宿線「上石神井」・JR中央線「吉祥寺」より「成増町」行き西武バス「石神井中学」下車 徒歩5分/西武新宿線「上石神井」より「順天堂練馬病院」行き練馬区福祉コミュニティバス「石神井公園」下車
*その他付帯設備: 石神井池にボート場(営業時間:9:00〜17:00 休日:毎週木曜日(木曜日が祝日の場合は翌日)*年末年始、12〜2月は土日祝日のみの営業

ミシュラン(☆3つが最高)
ひとり: ☆☆☆ 絵などを描きつつ、三宝寺池脇の食堂でアルコールをたしなむ。そんな一日を過ごせるのが粋なヒトだと思います。 
ふたり: ☆☆  ここのボートは井の頭公園のような伝説はないので気兼ねなく乗ってOK。楽しいことを素直に行なっていい公園です。
おおぜい:☆☆  カレー鍋とオヒツにつめたゴハンをキャリーに乗っけて持って来て、ここで食べてる家族を見かけました。楽しそう。
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by na2on | 2010-04-16 23:06 | 公園案内。
2010年 04月 14日
自然教育園 森の品格。
 自然教育園は、白金のうっそうとした森だ。

 もとは隣の庭園美術館と併せて、さる皇族の住居だったそうだが、戦後に、今のような誰でも入れる場所となった。ちなみに全域が、天然記念物(!)および史跡に指定されている国立の施設だ。だから、と言ってはなんだけど、いわゆる集客のための努力的なものはあまりなされていない。

 そもそも、園内の看板に、武蔵野の原生林の雰囲気を残すべく、できるだけ手を入れないようにしている、と明記されているだけあって、園内の木は名札こそかけられているものの、同じ種類で並べられることもなく、雑然と枝を伸ばしている。だから、江戸時代の回遊式庭園の名残とされる巨大な松の枝に、モミジの葉っぱが覆いかぶさるなどという光景も見られる。一事が万事、池にかかる橋に立っても、寄ってくるのはいまひとつ愛嬌に欠ける亀だ。美しい鯉はいない。桜や梅といった木が並ぶわけでもないし、ごろんと寝転べるような芝生があるわけでもない。「華」というものにあまりに無頓着なのである。

 でも、にじみ出てくるような品のある場所だ。

 園の中心部の池を横目に見ながら小道へと入り、草葉かきわけるように歩く。上を向いて、木々の枝が青空を背景に描く模様を見る。下を向いて、路傍に生える趣味の良い陶磁器みたいな草花を見る。ぐるりと見渡すと、木々の向こうに、背の低い草が群生する湿地が広がり、その手前に小川が流れているのが見える。

 ゆっくりと息を吸って吐き出すと、この空間を包む空気の濃さ、匂いの鮮やかさに気づく。簡素な花壇の回りを、豪族の屋敷跡とされる盛り土の脇を、ゆるゆる歩くと、見たことすらない、本物の武蔵野の森のほんとうにチャーミングな部分を大事に抽出された場所のように感じてくる。一流の腕を持つ店主が自分で選んで煎った豆をドリップしたコーヒーのような、いささか渋めの味わいとも言えるだろうか。

 自然を都心に残す、という至極まっとうな使命がこの公園にはある。そのことに誠実に対する、すなわち、人々や鳥、昆虫といった生き物のために、都心に深い木立を提供し続けることの意味を考えれば、木や花にちょっと名札も付けてみるくらいで、人目をひく工夫はおしまい、となるのも必然だ。あれこれするのは余計なことだ。代わりに、自然の営みに合わせて歩みを続けていく、燃え尽きることのない静かな情熱が不可欠だ。

 池の端に建てられた小さな東屋で、虫にちょっかいを出して遊んでいる子猫の横に座って、そんな浮世ばなれしたところが面白いなあ、とぼくは思う。判る人でも判らん人でも来てくれていい、まあ最悪来なくてもいいかもしれない、という空気が園全体に漂う。

 偏屈、ではないが、すり寄ってくることもない。粋じゃない場所だ。でも、やるべきことが適切に、しかも淡々とやり続けられてきた上ではじめてにじみ出てくる、趣味の良さがある。デザインは古いが、きちんと仕立てたスーツを着て端然と立つ老紳士の雰囲気だ。

 ぼくたちがその意図に気付き、興味を持ち出して、草花や、生き物に目を凝らしだすと、園内の名札は語り始める。こちらにもこういったものがあります、あちらへいってもおもしろいかもしれません。それぞれの相関関係や、それぞれの持つ魅力まで、無駄のない解説は途切れることがない。自らが認め、大事にしてきたものへ、興味を持ってもらったことへの率直な嬉しさを含んだ、老紳士の張りのある声が聞こえてくるようだ。

 ちなみに隣の庭園美術館と芝生はこことはテイストの違う上品さを持つ都内屈指のスポットだ。目黒通りを越えた高級住宅街の真ん中にある池田山公園は、23区内では珍しい湧水による池がある日本庭園で、訪れる者まで背筋がすっと伸びるような雰囲気を保っている。

 ♣♣♣

自然教育園(しぜんきょういくえん)
*所在地:港区白金台5-21-5 TEL03-3441-7176(教育管理棟)
*開園時間:9月1日〜4月30日 9:00〜16:30/5月1日〜8月31日 9:00〜17:00 (いずれも入園は16:00まで)
*休園日:毎週月曜日および国民の祝日の翌日。月曜日が国民の祝日または振り替え休日の場合は開園し、その翌日に休園(ただし、土曜日、日曜日は開園)、年末年始(12月28日から1月4日まで)*その他臨時に休園する場合あり。
*入園料:一般・大学生300円、 小・中・高校生無料
*アクセス:JR山手線 目黒駅東口より徒歩7分/東京メトロ南北線・東京メトロ三田線「白金台」出口1より徒歩4分
*その他付帯設備:正門横の教育管理棟のディスプレイはこっていて面白い。隣の庭園美術館には芝生広場、カフェあり。

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆☆ 園のホームページには皆さんお誘いあわせのうえ、と書いてありますが、ひとり散策だって、すごく気持ちいいです。
*ふたり: ☆☆☆ とは言っても、都心の深い森をふたりで散策するのも悪くない気分です。時間を気にせずゆっくり歩いてみましょう。
*おおぜい:☆☆  園内では飲食等禁止です。家族でくるなら、隣の庭園美術館で遊びつつ、ここの森も散策、というコースがいいかも。
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by na2on | 2010-04-14 23:43 | 公園案内。
2010年 04月 13日
水元公園 エバーグリーン・ブルース
 地元の人に聞くと、水元公園はもともとは昼なお暗いだだっ広い公園で、危険な印象の強い場所だったそうだ。ずいぶん整備され、晴れやかな印象の現在の姿からは、当時の妖しげな雰囲気は希薄になっているが、それでもまだ、この広大な公園では、他では味わえないワイルドな気配を感じることができる。そして、同時にここに集う人々もまた堂々と自らのあるがままを放出してもいる。

 前日までの雨雲がきれいにぬぐい去られた初夏の日、この公園の表玄関とも言える、水元大橋脇の噴水広場の入り口に立ってみたことがある。

 目に入るのは、いい気分で酔っぱらって道行く人々に悪態をつくオヤジ。そのオヤジに声をかけられて、怖がる風もなく普通に会話をする少年、顔見知りとおぼしきじいさんをからかって、くすくす笑いあうおませな女の子ふたり組、だが、じいさんも彼女たちにいじられてまんざらでもなさそうだ。草はらの上をはいはいする赤子。その脇でのんびりと座る母親。彼らは、皆、自然にこの公園に集って来て、時に絡みあいながら、それぞれの時間を過ごしているようだ。

 公園の横には広い川が流れる。四方を緑に囲まれた川辺に立つと、水面をわたってきたそよ風が出迎える。実は釣りの名所としても有名なだけあって、老若男女が釣竿を持って並ぶ川っぷちを歩くと、背の高いラフな草むらの先にはメタセコイアの森が見える、そのまた向こう、ずいぶん歩いた先には、ポプラ並木と草はらがある。

 その広大な草はらにはじめて行ったのは、霧のような小雨の降る晩秋だった。芝生全体に高原にいるかのようなもやがかかり、かなたのポプラの木々が、うっすらと浮かぶ。中へ入っていくと、水滴を含んだ背丈の高い芝生がたちまち靴底を湿らせる。背後の木立で雨宿りをするカラスのかあ、という鳴き声が水に満ちた空気の中に響く。ブルーノ・ムナーリの絵本の舞台に入り込んでしまったような、都会にいることが信じられなくなる空間だった。

 その雨の日の草はらの様子を頭に思い浮かべながら、頭上を見上げると、木立の葉っぱが陽に照らされてちらちらと揺れている。それまでぐずついた天気続きだったところに、久しぶりに現れた太陽を、人だけでなく、みどりも思う存分に受け止めて、ほっと息をしているようだ。

 子どものころ、空を見上げたら、今日みたいに日差しがきゅんとさしこんできて、こんな風に葉っぱが揺れていた日があったな、と思い出す。そんな日にがりがり食べたアイスキャンディーはおいしかったな、と。

 ぼくが生まれ育った町にも、川が流れ、木々が生い茂るだだっぴろい公園があった。ぼくたち子どもは、口にこそ出さないけど、ことあるごとにそこに集い、走り回ったり虫をつかまえたり、屋台のたこ焼きを食べたりしていたその公園のことをとても大切に思っていた。

 大きくなっていくにつれ、整備され綺麗にはなったが、それでもどこか手付かずの「やばさ」も湛えた公園のグランドで、ぼくたちはなれないセブンスターを吸ったり、がんばって公園から出てスナックへ潜入したりして、自分たちなりのデビューを果たしていった。要するにその公園は、地元の子どもたちにとっての「庭」だったのである。

 この公園もまた、ワイルドではあるものの、居心地がいい。お兄ちゃんや女の子たちや赤子が大きくなっても、いつだってそこで体験したことを思い出せる、そして、いつだって戻ってこれる。本質的にはそんなやさしい場所なんだろう。

 考えてみれば、ここの最寄り駅は金町、亀有という、ざっかけなくもブルージーな町である。気やすいけど、甘えた気分ですり寄るとぴしゃりとはねかえされるような、そんな町に広がる公園は、そこに自然に人が集まってくる場所であると共に、なかなかたどり着くことのできない内奥部に、しんとした空気を醸し出す草はらも持ち合わせている。親しみやすさ、野性味、そして内省。なんだか、酔っ払いオヤジのだみ声がブルーズに聞こえてきた。

 ここは、町の人々のハートとソウルが欲し、作り上げてきたオアシスなのだ。

 ♣♣♣

水元公園(みずもとこうえん)
*所在地:葛飾区水元公園3-2
アクセス:JR・地下鉄千代田線「金町」から京成バス(戸ヶ崎操車場または西水元三丁目行き)「水元公園」下車 徒歩7分
*その他付帯設備:釣り人には有名な場所。公園周辺には釣り具関係のお店が点在。

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆☆ 釣りはもちろん、サイクリングにも適した公園だと思います。園内を歩ききると、相当足にきます。
*ふたり: ☆☆  他の公園に比べ、カップル率はやや低め。どちらかと言えば渋めで売っている公園と言えるでしょう。
*おおぜい:☆☆  中央広場は晴れた日の休日には、大勢の人でにぎわいます。必要なものはあらかじめ用意するのが吉。
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by na2on | 2010-04-13 00:58 | 公園案内。
2010年 04月 12日
萩中公園  「とりあえず萩中公園に集合な」
 東京の城南地区で、大田区は世田谷区と並んで味わい深い公園が多い区と言えます。その中でも特にいい感じの公園と言えばこの萩中公園が出てきます。

 京浜急行空港線の大鳥居駅が最寄駅です。駅周辺は日本が世界に誇る町工場のメッカです。「世界のオオタ」の一員として長年働いている職人さんに聞くと、それまでは月末でも産業道路が渋滞しなかったのだけど、最近復活してきたと言っていました。渋滞を歓迎するような口ぶりがおかしかったのですが、製造業に活気が戻ってきたことが端的に分かる話です。ただ、少し前の話だから、今はまた厳しくなっているのかもしれませんが。

 町工場街から少し離れた一角に萩中公園があります。

 まず目を奪われるのはぼろぼろのバスやロードローラーや路面電車が立ち並ぶ一角です。感動するほど手を入れられていないそれらのスクラップは、誰でも自由に出入りが出来るようになっています。バスの運転席に座る子供がいたり、消防車の上で話し込む若いお母さんたちや、漁船(!)の中で寝転ぶおじさん。まったく統一感のないオブジェクト&客層ですが、不思議なくらいそれぞれが共存してなんだかまとまりのある風景を醸し出しています。

 乗り物広場(?)の先には、交通公園が広がります。小型の自転車やカートで用意されたコースを走って楽しむ中から交通ルールを学ぼうというスペースは、23区内のあちこちにあります。ここはその中でも結構古い方だと思いますが、よく手入れをされていて好感をもてます。休みの日には子供たちでいっぱいになりますが、平日には職員たちが、交通公園の自転車を整備したりしてのんびりしています。

 ここは、基本的には地元の人のための公園だと思います。さらに言うなら、地元の子供にとって、なんかあったら「萩中公園」がとりあえず集合場所、みたいな公園です。自転車に乗って通いつめていた子供たちが、少し大きくなっていろんな意味でさかって、恋の語らいをしたり他校の学生といがみあったりして、というような公園。

 もしかしたら、消防車の上で語らっているヤンキー上がり風のお母さんたちは、それらを一通り経験しているのかもしれません。で、多分、その消防車を危なっかしくよじ登っている息子と思しき子供たちもこれから一通り経験して、需要も回復してきた町工場で働き出すのかもしれません。そう考えると、乗り物中心のインダストリアルな構成物も、ありとあらゆる工業部品を作り出す町工場へのなじみを深めるには格好の素材です。

 とは言っても別に排他的なローカル意識が満載な場所ではありません。東京の公園を紹介する個人サイトの多くで、萩中公園は特に子供を持つ親御さんたちから高い評価を得ています。確かにこの公園は古いけれど、来る人を拒まない独特の人なつっこさみたいなものがあります。澄ましていず、かと言ってべたべたしすぎず、身ぎれい。居心地のよさを含めて、個人的には冒頭の町工場のおじさんに共通する感触があります。

 町工場の中をぶらぶらと海の方へ向かうと森が崎公園があります。羽田空港に発着する飛行機が間近に見られるこの公園もまた、ここらで育った人に聞いたら、なんかあったら自転車で集合する公園なんだそうで、なかなか味わい深いのです。

 ♣♣♣

萩中公園(はぎなかこうえん)
*所在地: 大田区萩中3-26-46 
*アクセス: 京急空港線「大鳥居」下車徒歩6分/JR「蒲田」から京急バス 萩中経由羽田空港行き「萩中公園前」下車徒歩1分
*その他付帯設備: 温水プール(夏は屋外プール)あり。

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆  少々距離はありますが、海の方へ行けば、羽田の海苔やツクダニ屋さんなども点在し、お好きな方にはたまりません。
*ふたり: ☆   近所の森が崎公園、あるいは大森駅から「城南島海浜公園」へ行って羽田空港を間近で見るとロマンチックではあります。
*おおぜい:☆☆☆ この公園は極めてハイレベルな「近所の公園」と考えればいいと思います。近くに駄菓子屋もあるし、子連れには最高。
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by na2on | 2010-04-12 02:46 | 公園案内。
2010年 04月 11日
六義園 時間に磨かれた人工庭園。
 徳川時代の江戸は、その市街地の50%以上の面積を武家屋敷が占めていた。中でも大きな屋敷の敷地内には、庭園がこしらえられ、最盛期には100以上を数えた。

 文京区の北のはずれに位置する六義園は、そんな江戸期の庭園を代表する大名庭園とされる。明治時代、三菱の創業家の手に渡った後、東京に寄付され、誰でも入れる庭園となった今も、その回遊式庭園としての風格は十分に残っている。

 和歌に詠まれた地を再現するなどした景勝地が、いたるところに配置され、池へ水が出てくる場所に「滝」を、築山に「峠」まで作り出した園内には、箱庭的宇宙とでも言うべき、ひとつの世界が作り出されている。ひとつひとつの要素が、互いの絡まり具合まで含めて当初から緻密に計算され、時間をかけて熟成した「和」の風景だと言えるだろう。

 同時に、ある程度の逸脱、木々の成長や繁茂といった要素も受け入れるだけの余白も作られているように感じる。

 いわゆる西洋的な、征服する、という姿勢で自然に対峙するのではなく、むしろ彼らと共存、もしくは一体化してしまおう、といった思想。それは、先述の洗練された景観だけでなく、そこから一歩奥に足を踏み入れた、わさわさと木々が枝を茂らせる裏道にも色濃く反映されているように感じる。うっそうとした木立を歩くと、ここもまた、庭園をゆらゆらと回遊する中で欠くことのできない一要素として、無理なく組み込まれていることを感じるのだ。

 六義園の、適度な調和を持った木々の連なりと水のありさまは、長い時間をかけて、人と自然が作り上げてきたものだ。

 新緑の季節のある日、ベンチに座ってぼんやりと桜の木を眺めていたら、白い杖を持った人が、付き添いと連れ立ってやってきた。桜の木を手で触れている。

「もっと太いんですよ。ここは窪んでいるだけで」

 付き添いの人がそう教えている。その人は、ゆっくりと手を窪みの中から出して、先へと伸ばす。

「大きな桜の木です」

 ざらざらした木肌をその人は触り続ける。その木を知り尽くそうとするかのようにずっと、ずっと触り続ける。葉桜となった木からは、花びらが舞い落ち続ける。

 六義園では、確かに自然が息づいている。完成してから長い時間を経て、名舞台の見立て、という工夫が持つトレンド的な意味合いは少々薄れたかもしれない。しかし、考え抜いて作られた人工庭園には、時間に磨き抜かれた自然が根付いている。

 その、木々やみどりや水のはっきりとした息づかいは、現代の人々をひきつけ、園内をゆらゆらと回遊させる魅力を持っているようだ。

 ちなみに文京区も名公園の密集地だ。小石川植物園、小石川後楽園は言うに及ばず、椿山荘隣の緑濃い新江戸川公園、アールデコ調のエントランスが渋い元町公園、人工地盤の上の給水所公苑など、この近くに住めば通うだろうな、と感じさせる素敵な公園が揃っている。また、六義園から北へ少し行ったところの旧古河庭園も洋館と芝生の西洋式庭園と、日本庭園が共存する素敵な庭園だ。

 ♣♣♣

六義園(りくぎえん)
*所在地:文京区本駒込6-16-3 TEL03-3941-2222(六義園サービスセンター)
*開園時間: 9:00〜17:00(入園は16:30まで)
*休園日: 年末・年始 (12月29日〜翌年1月3日まで) ※イベント開催期間及びGWなどで休園日開園や時間延長が行われる場合もあり。
*入園料: 一般及び中学生300円、65歳以上150円、小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料。団体割引等あり。 *みどりの日(5月4日)、都民の日(10月1日)は入園無料。
*アクセス:JR・東京メトロ南北線「駒込」下車 徒歩7分/都営地下鉄三田線「千石」下車 徒歩10分

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆  六義園の最寄り駅、駒込は味わい深いお店も多い場所。駅の反対側の古河庭園と染井霊園周辺もワビサビ利いてます。
*ふたり: ☆☆☆ 画学生とおぼしき女の子ふたりづれが山の上で並んで絵を描いているのをみかけたことがあります。渋いですね。
*おおぜい:☆☆  団体の方々が結構います。故郷の両親や親戚といった人たちをアテンドしてここに来るのは、オツだと思います。
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by na2on | 2010-04-11 21:15 | 公園案内。