2010年 04月 25日
大島小松川公園 東の空、東のみどり。
 気の利いた芝生って、つまりこんな感じじゃないだろうか。

 この公園に来るとそう感じます。

 大島小松川公園は都営地下鉄新宿線の東大島駅を降りてすぐのところに広がっています。駅前に立ち並ぶ団地群の中を通り抜けて行く方が近道です。

 しかし、できれば荒川の河川敷に上がっていくことを、もし、天気がいい日ならば、荒川と中川を渡った次の駅、船堀駅で降りて江戸川競艇場を右手に見ながら船堀橋を渡っていくことをおすすめします。

 広々とした川を眺めながら歩く道は、それだけでも足を運んできた価値があると言っても過言ではないこの公園へのアプローチです。

 そしてこの大島小松川公園は、そんな景色にも負けないだけの地力を持った公園です。

 春には桜が咲き乱れる土手から公園に入ると、一面の芝生が広がります。

 隅の方には、バーベキューが出来る水場と、遊具がありますが、メインの広場には何もありません。芝生があるだけです。余計なものは一切ありません。

 周りは、様々な形状の中・高層の団地に取り囲まれています。ある意味、とても東京的な背景かもしれません。

「東京的」というのは、この場合住みにくいことを意味します。実際、この公園も高層団地が立ち並ぶ中にやむなく作られた防災施設、避難所といった側面があるようですが、ぼくは、ここに住む人のことがうらやましい。

 陽がさして、みどりがあるこんな場所が、いつでも、手の届くところにあるのですから。

 近くに住んでいなくても、この公園は、1日かけて楽しむだけの価値があります。バーベキュースペース利用の予約を取ってもいいと思います。

 公園にいるのにちょっと飽きたら、長めの散歩をすることをおすすめします。

 東大島の駅を南に歩くと、ほどなく仙台堀川公園に行き当たります。

 この運河に沿って作られた細長い公園は、自転車で通る人や、ベンチで座る人や、キャッチボールをする子供たちで平日でも人が大勢いる、地域に同化した公園です。

 そのまま歩いて砂町松本橋の交差点を右に曲がると、丸八通りにぶつかります。そこを越えれば砂町銀座商店街です。時分ともなれば、夕餉の買い物に出てきた人たちで、すれ違うのも難しいくらいの細い路地には、魅力的な商店が立ち並びます。コロッケやパンを買って、食べながら歩くのも、公園に戻って寝転びながら食べるのもいいでしょう。

 寄り道から戻ると、空が見える芝生が待っています。この広い芝生では、団地も適度な背景にすら見えてきます。

 緑と空と水。それ以上何がいるのだろう。東京の東のまんなかにある、この公園に来ると、そう感じます。

 しかも、ここには、それらは手付かずで、たっぷりあるのです。

 ♣♣♣

大島小松川公園(おおじまこまつがわこうえん)
*所在地:江東区大島9丁目、江戸川区小松川1丁目 TEL03-3636-9365(大島小松川公園サービスセンター)
*アクセス:地下鉄新宿線「東大島駅」下車 徒歩3分。

ミシュラン(☆3つが最高)
ひとり: ☆☆  線路の南側に広がる丘の方に登って、川面を眺めながらひと休み。なんて贅沢なひととき。
ふたり: ☆   ふたりでコロッケを食べたりしながら「東京の東側」を満喫する休日もなかなかでしょう。
おおぜい:☆☆  バーベキュースペースを使う場合は、予約が必要です。見晴らしのいい一日が過ごせます。
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# by na2on | 2010-04-25 09:00 | 公園案内2
2010年 04月 24日
新宿御苑 「御苑と私」
 ワビサビとか、風流とかそういったものを面白がってつらつらと公園を見て回っているが、新宿御苑は、微妙な差異を意に介さない圧倒的な実力を持っている。いわば、キング・オブ・シティパークだ。

 園内に適切に配置された木々は、品良く並んで、品のいい花や実を結ぶ。池はそんな木々の枝と空の雲を映しこみ、芝生は青々と広がる。しかも園内は広い。常に人々が集っているが、花見などの特殊な時期を除いて、余裕を持って気ままに座ったり、遊ぶことができる。

 丁寧に手をかけられている園内の自然は、大きな逸脱なく、木々はきちんと並んで人々を迎え入れる。その向こうに新宿のビル街、ずっと遠くには東京タワーも見える景色は、東京の最も美しい表情のひとつとなるだろう。ニューヨークのセントラルパークなんかもこんな雰囲気なのだろうか。西洋風のシティパークのひとつの極みである。

 ひろびろとした芝生と美しい木立はもとより、イギリス式、フランス式、という西洋式庭園の二大流派の本格的な庭園を備えてもいる。そして西洋式ばかりではなく、一方で、日本庭園もちゃんとある。和洋取り揃えた奥行きの深さ。さらにゴミが少なく、トイレも基本的に清潔だ。ひとりで行っても、ふたりで行っても、大勢で行っても、1日楽しめる。はっきり言ってアリのはいでる隙間もないくらいの磐石なオトナの公園道を貫いている。

 トラディショナルという言葉が頭に浮かぶ。コンサバティブという言葉も浮かぶ。ついそういうものを茶化したくもなりもするのが、人の常、いやはっきり言えばぼくの習癖ではあるが、足しげくここに通っているうちに、そんな気分は抜けて、この公園の醸し出す雰囲気に身を委ねる心地よさを味わうことになる。毒気を抜かれた格好だ。

 素直になったぼくは、思う。新宿御苑があるからこそ、東京の他の公園を心ゆくまで楽しめているのかもしれない、と。

 ここにはぼくが思っている都市の公園が備えるべき要素が大体揃っている。それらは好みを超越した一般性を持った要素だ。だから、他の公園が御苑に比べて、どこが足りないのか、とか味わい深さを持っているのか、がその公園を評価する大きな基準となり得るのだ。

 逸脱の面白さは、常識とか伝統とか、王道があるから生まれてくる。逆に言えば王道がなければ逸脱は存在できない。逸脱は常識になったらカッコ悪いが、王道は常識を超越している。

 パンクやアナーキーもカッコいいが、無理やり続けたらくたばってしまう。それでもカッコよくそれらを続けている人は、意外と正統とかを良く勉強したりしているのである。

 常識的に考えると、自分の基準を持って行動できる人がカッコいい。世間から見て逸脱していても、彼らの基準は必ず今までにあったもの、あるものの中から自分で取捨選択して作り上げられている。それがいつしか人々を納得させ「道」ができる。

 そして公園の王道として、新宿御苑が存在するのである。

 昔ここで焚き火をしようとしたりして(未遂です)、無頼を気取っていたぼくは、深い反省とともにこの一文を書きました。

 ♣♣♣

新宿御苑(しんじゅくぎょえん)
*所在地:新宿区内藤町11 TEL03-3350-0151(環境省新宿御苑管理事務所)
*開園時間:9:00〜16:30(入園は16:00まで)
*休園日:月曜日(月曜日が祝祭日の場合は翌日)、年末年始(12月29日〜1月3日)*月曜日も開園の時期もあり。
*入園料:大人(15歳以上)200円、小中学生50円、他。
*アクセス:JR・京王・小田急線「新宿」下車 徒歩10分/地下鉄副都心線・新宿線「新宿三丁目」下車 徒歩5分/地下鉄丸ノ内線「新宿御苑」下車 徒歩5分/JR「千駄ヶ谷」下車 徒歩5分、地下鉄大江戸線「国立競技場」下車 徒歩5分、他。

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆   近接する高島屋の入っているビルのテラスから御苑が一望できます。隠れた名所です。
*ふたり: ☆☆☆ ハンカチの木というロマンチックな名称の大木を見たりしながら穏やかに過ごせます。
*おおぜい:☆☆☆ 家族、友人と連れ立って花見やピクニックを楽しめます。追分団子を買うのがおすすめ。
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# by na2on | 2010-04-24 23:27 | 公園案内2
2010年 04月 23日
荒川自然公園 都電に乗って。
 荒川区は、鮮烈な下町テイストを持った町を抱える区だ。日暮里の駄菓子問屋街は再開発で消えてしまったが、それでもなお、いい具合の風景が数多く残っている。そんな区の真ん中を横切っているのが、都電荒川線だ。

 終点の三ノ輪橋を降りると古めかしい商店が立ち並んだアーケード街だ。鰻の蒲焼やヌカ味噌の匂いが立ちこめ、その横にアッパッパ的な商品をぶら下げた服屋があっておばちゃんたちで混みあっている。

 ここら辺は昔から裁ちばさみや和竿など和物関係の職人が数多く住む町で、今も数こそ少なくなったが、それぞれの分野で一流と称される職人たちが残っている。彼らは、昔からの手作業の精度を上げ、更に商品を現代の需要に合わせるべく試行錯誤を繰り返して、現在の地位を築き上げている。

「手作りって懐かしいよね~」という見世物めいた世間の見方には笑って応えながら、そこから遠く離れたレベルでしたたかに生き残っているのだ。そんな町の商店街に、蒲焼屋が多いのは、手っ取り早く精を付けたい職人が、漬物を売るお店が多いのは、職人である亭主の仕事を手伝いながら家族のご飯を手早く作らなきゃならないオカミさんが数多くいた名残かもしれない。

 荒川自然公園は、三ノ輪橋から少し戻った荒川二丁目駅を降りてすぐの所にある。自然公園と銘打っているが、三河島水再生センターという下水処理場の上に作られた公園である。貯水池の上に作られた公園は23区内に数多くあるが、白鳥が休む池もある人工地盤とは思えない風情や、お年寄りから子供まで集うにぎやかさ、そして三ノ輪商店街をそばに控えた立地を含めて、ここの魅力は頭一つ抜け出しているような気がする。

 駅からだらだら坂を登ったところに池のある庭園があり、そこにはお年寄りなぞが静かにベンチでなごんだりしている。その先へ行くと遊具が並ぶ児童遊園が、そして奥には交通園があり、都電の踏切の音をややマイルドにしたニセ踏切がせわしなく上下する中を地元の子供たちが(足こぎ式)ゴーカートで爆走している。その傍らのベンチでスケッチブックを広げるおじさんなんぞもいて、この公園の年齢層は幅広い。

 ここいらは下町なんて言いながらも、川向こうには巨大なマンションが並ぶ。この公園は長い歴史を持つ町並みの中では新しく出来た部類に入るだろう。集っている人たちも、昔からの家の人と、新しいマンションに住む人が混ざっているようだが、それぞれが適当に遊んでいる。要するに、この公園は新旧でうまいこと融合している場所だ。

 元からここに住む人たちは、変化する町並みについて聞かれたら「昔の風情がなくなって」なんて相手が喜びそうなことを言いながら、本当はそんな変化を楽しんでいるんじゃないかとさえ思う。

 職人さんじゃないけど、東京に古くから根付いている人たちは、したたかで、柔軟で、格好いい。

 ♣♣♣

荒川自然公園(あらかわしぜんこうえん)
*所在地:荒川区荒川8-25-3 TEL03-3803-4042(公園管理事務所)
*開園時間:6:00~19:00(5月~9月)、7:00~19:00(3月~4月、10月~11月)、7:00~17:00(12月~2月)
*休園日:毎週月曜日、12月29日~1月3日
*アクセス:都電荒川二丁目駅下車すぐ。

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆  定番ですが、都電沿線は散策するにはもってこい。この公園で夕暮れを眺めるなんて乙です。
*ふたり: ☆   この空中庭園を歩くカップルをモデルに気の利いた恋愛小説ができそうな感じではあります。
*おおぜい:☆☆  家族で、あるいは家族同士で遊ぶには最適。都電沿線なら尾久の原公園も広くておすすめです。
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# by na2on | 2010-04-23 21:10 | 公園案内2
2010年 04月 22日
風が吹く場所。
 晴れた日に、海に面した人工庭園に行った。奇麗に刈り揃えられた芝生が植えられた池の周りを、ぼくは観光客と一緒にゆらゆらと歩いた。海水をひいた池の水面には陽光がきらめき、新緑が映し出される。その背後には、高層ビルの群れが屹立し、午後の光を反射している。

 美しく配置された箱庭のようなこの庭園の奥にある木立を入って、土手を登ると、もうひとつの池が現れる。表の明るさとは対照的に、人の気配のうすい池を、ぐるりと取り巻くように細くくねる道を歩いていると、いつの間にかひんやりとした空気がまわりに満ちていることに気づく。

 陽の光を遮る木立の中で、池はひそやかにたたずむ。波をたてない水面はその滑らかな肌に木立を映し込んでいる。かつては鴨猟のために作られたという池のほとりには、鴨を待つための小さな小屋が、今でも残されている。

 六角形の木組みの小屋に入って、池を見る。覆いかぶさるように茂る木々の枝を写し込む水面には、秘密めいた雰囲気が漂う。

 ここは、音を吸い込む池じゃないか。ふと感じる。思いつきのように頭に浮かんだ考えは、次第にぼくの中で故もなく確信へと変じていく。

 都市には、特有のノイズがある。車やエアコンといった数限りない人工物と同じく数限りない人々がそれぞれ出す音が集まってできた、単調で微妙にうねる通奏低音。

 その音は、風が運ぶ。都市に流れる風は、様々なものが発する音をひとつずつ集めて、町の中を駆け巡る。風が集めた音は、低く流れるベース音。そして風がビルや街路樹を通る時の音が、メロディーとなって音楽のようにも聞こえる。

 音を集めた風は、やがてその重みで動き回ることができないようになってくる。動けなくなった風は、とどまり、淀んでしまう。風が動き続いて、その場限りのうたをうたい続けなければならない。

 だから、たまったおりをかきだすような、音を抜く作業が不可欠だ。

 そのために、風は、東京をひとめぐりすると、この池の真上で収束して、吸い込まれる。そして、暗闇が支配する地下の通風管をたどって、音をふるい落として、新たな風として生まれ変わる。

 その目には見えぬ、空洞の太い管の中を束になった風が流れていく。音は、空洞の中でふるい落とされていく。ごうごうという轟音が暗い管の中に鳴り響く。

 しかし、この池で進められるものごとは、表面上は、静寂に支配されている。そして、水面下ですべてが無駄なくすみやかに行なわれていく。だから、そのことを知る人はいない。

 管は、海の向こうにある埋め立て地にぽつんと立つ、風車につながる。風は、そこから再び海に向け放たれる。

 風車の元の小さな小屋には、ひとりの風車番が寝起きし、風の様子を確かめ、風車の具合を調整している。余計な音が残っている風が町に流れても、風車の向きや強さを間違っても、あちこちに悪影響が及ぶ。最初はかすかな違和感がやがて大きなずれとなってしまう類いの悪影響だ。

 でも、風車番の腕は確かだ。彼は淡々と、決められた時間に風を見て、雲行きを見ながら、風車を調整していく。しゃべりたくなくてここに来たのか、ここに来たからしゃべらなくなったのかは、分からないが、無口だ。

 たまに風車の周りに作られた公園に遊びにきた人が話しかけても、彼は、最低限の言葉しか話さない。子供が興味を持つと、ポケットからあめ玉を出して、渡す。夜になると、ハーモニカの音がたまに聞こえる。多分彼が吹いているのだろう。

 池の脇に建てられた小さな木組みの小屋で、ぼくは、そんな想像をしながら実際に池に音が吸い込まれるありさまを目に浮かべる。すぐ脇の首都高速を走る車の走行音が、急に遠くからのやってくる音のように小さくなる。

 そして、海の向こうから流れてくる風のうたが、確かに聞こえるような気がして、一所懸命に耳をすます。

 からすが、かあ、と鳴いて、現実に引き戻された。車の音が耳に戻ってくる。そしてぼくは、歩き出し、町の中へ戻っていく。
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# by na2on | 2010-04-22 02:06 | よりみち。
2010年 04月 21日
善福寺川緑地/和田堀公園 君がいるところ。
 個人的なことだが、ぼくはこの公園のわりと近くに住んでいたこともあって、当時は頻繁に通っていた。早くに目が覚めたから、天気がいいから、特に用事もないから、と、公園に行く理由はいくらでもあった。

 公園に行くと様々な人とでくわした。朝行けばジョギングをする人や詩吟をうなる人。昼行けば寝転がる人や太鼓を叩く人、詩吟をうなる人。夜行けばタバコを吸ってたたずむ人や詩吟をうなる人。何だかうなる人ばかりのような感もあるが、実際かなりの確率でうなり声を聞いた。多分ひとりかふたりなんだろうけど姿はついぞ見たことがない。

 川沿いのある家の前にはダンボールが置かれ、奇天烈な書体で「10円」とか「100円」と書かれた値札が下げられていた。中には自転車のサドルとか、ネジといった不思議な商品群に混じって唯一まっとうな商品としてテニスボールが並べられている。テニスボールは常にたっぷりと用意されているが、そこに立った我々はすぐそばにテニスコートがある事実を確認し、ここで100円で売られている少し使い込まれたテニスボールがどこで仕入れられたかについて、思いを馳せざるを得ない。

 奇天烈な書体の書き手と思しきおじさんは、午後になると川に餌を投げ込む。カモが集まり、たちまち阿鼻叫喚の様相を示す。かわいいねえと、この餌を買うお金(つまりテニスボールの収益金だ)がどういう流れで生まれてきたのかを知らない無知なギャラリーが集まると、どこからかやってきたもうひとりのおじさんが来て囁く。

「このカモたちはね、夜になるとお台場にあるねぐらに帰るんだよ」

 カモに付いていって見たのかよ、という素朴な疑問を投げかける間もなく、彼は別のギャラリーのところへ行って「夜はお台場」を繰り返す。その目的は不明だ。

 少し昔には、この公園の周辺は、うっそうと茂る森や緑地が続く渓谷で、子供たちの格好の冒険遊び場だったそうだ。整備が進み、芝生や遊具やグラウンドが点在する今でも、渓谷だった頃の片鱗は確かに感じ取ることができる。かつて大自然を彷彿とさせるだけの、余白がそこかしこに残っているのだ。

 木々が気ままに生い茂る余白の残った、川沿いのこの緑地に、近隣の人たちは、何かと集まって、思い思いの諸々を表現したり、放出していた。

 あるとき、公園の整備のピッチが急に上がった。その直後、ぼくは引っ越して郊外に移ってしまって、この公園から足が遠のいてしまった。

 ただ、この公園が、他でもよく見る、芝生が刈り揃えられたこぎれいな緑地となったとしても、現、旧いずれの少年少女も、変わらずに集って、なにやらイケてる遊びにいそしんでいるだろう。

 詩吟やお台場はもとより、夏の日の夕暮れに見た、打ち捨てられたような野球場でノック練習にいそしんでいた少年たちや、草はらに主人たちに連れて来られて互いに匂いを嗅いだり、走り回ったりしていた犬たちは、変らず元気にやっていくだろう。だって、ここはいつだって、皆の集う場所なのだから。

 ぼくは、ここの近所に住んで、我が家の庭のように足しげく通った。ここで過ごすひとときがとても大切だった。ここで見かけた人や動物を隣人として親近感を抱いた。公園は、ただそこに存在し続け、ぼくたちを受け入れ、ぼくはたくさんのものごとを体感してきた。そうやって、ぼくは、東京に住む、ということを、実感していった。

 あなたの近所に、いい公園はありますか、とぼくは聞きたい。もうあればラッキー。無ければ探せばいい。東京にはたくさんいい公園がある。見つかったら、そこに通いつめればいい。

 気の利いたカフェやパン屋を近所に見つけるように、そうやって、ぼくたちは少しずつその土地に根をおろして行くのだと思う。

 ♣♣♣

善福寺川緑地/和田堀公園(ぜんぷくじがわりょくち/わだぼりこうえん)
*所在地:杉並区成田西1-30-27
*アクセス:京王井の頭線「西永福」「浜田山」下車 徒歩15分/関東バス(JR中野駅─吉祥寺駅)「善福寺川緑地公園前」下車/京王バス、関東バス(京王井の頭線「永福町」駅-松ノ木住宅経由-JR「高円寺」駅または地下鉄丸の内線「新高円寺」(M03)駅行)「都立和田堀公園」下車

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆  ひとり東西に長い公園を散策するといろんなものが見えてきます。かつては前川國男設計の阿佐ヶ谷住宅も公園そばにありました。
*ふたり: ☆☆☆ 散歩したり、和田堀にある釣り堀で遊んだり、大宮八幡を参拝したり、ワビサビの利いたひとときを楽しめること請け合います。
*おおぜい:☆☆☆ 暖かい季節は園内あちこちでお弁当を広げたりする人が見受けられます。遊具もそこここにあるので子連れも楽しめる公園です。
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# by na2on | 2010-04-21 06:36 | 公園案内。
2010年 04月 20日
浜離宮恩賜庭園  箱庭東京。
 浜離宮は、時の徳川将軍によって作り出された庭園だ。

 岬の突端を埋め立てて作られた庭園の先には、当時、海しか見えなかった。時を経た今、庭園の向かいには拡張を重ねた人工島、月島が目の前に迫り、倉庫や高層住宅が建ち並んでいる。海辺の無機質な景観の中で、ここだけが異質なまでに、丹精を込めて作られたみどりと水のコントラストを味わえる場所として、ぽつんと残されている。

 そんな庭園の正面玄関、大手門から中に入る。広場を越えて、内堀を渡ると花畑が目の前に広がる。その横に作られた、真ん中に大きな木が1本そびえる草はらに、ぺたんと腰をおろすのは、個人的にとても好きな時間だ。菜の花をはじめとして、折々の花が咲く花畑とその背後に建つクラシックな造船会社のビルをながめる位置に座ると、よく出来た箱庭の中にいる気分になる。

 精緻であたたかで、すみずみにまで目を向けたくなる楽しい箱庭。その中を歩いてみよう。

 花畑を抜けると、高さをそろえられたチャーミングな梅林、そこを越すと水上バスの発着場。直角に曲がって、そのまま海沿いを歩いて、東京湾をのぞむ小高い丘。向こうにレインボーブリッジをのぞむ丘を下って橋を渡ると、芝生に囲まれた海水を引き込んだ潮入りの池が眼前に広がる。

 御茶屋の日本家屋が、背後の汐留の高層ビル群を水面に映した池に浮かぶ光景は、奇妙にバランスの取れた美しさを持つ。和と洋、伝統と革新、自然と人工、様々な要素を併せ持つ都市空間をシンボライズする光景だ。

 このコースが庭園の「陽」というべきものだとすれば、それほど広くはない敷地内に2つもある鴨場と呼ばれるかつて鴨猟のために作られた池の周辺は、森の気配を漂わせた「陰」の部分を受け持つ。

 花畑前の草はらを横切って奥の木立に入ると、すぐに光がさえぎられる。ひやりとした空気がたちまちあたりにただよい、途切れなく聞こえていた自動車の音も木々にさえぎられる。重なる木々の間から水面が見え、その先に東京タワーの先端部が顔を見せる。うすぐらい場所から見る鉄塔は、昼のまぶしい光を浴びて、しらっちゃけた空との境目がはっきりしない。

 もうひとつの秘密めいた場所にある鴨場の池も訪れてから、木立の間を抜けて、再び、潮入りの池に戻ってみる。なだらかな景色が、木立を越えると同時に、いちどきに広がり、そのまぶしさに一瞬目をつぶってしまう。目が慣れてからもう一度見渡してみると、光差す海の先に建つ月島の高層住宅を背景にした芝生を、浅草発の水上バスから上陸したとおぼしき人々がゆらりゆらりと歩く。潮入りの池は、そのおだやかな水面に、都市の建造物を映し込むことに余念がない。

 かつてこの都市を作り出した為政者が自分たちのためにこしらえた庭園は、隅々まで計算され尽くされた自然がひろがる都心の庭園として、今も人を魅了する。

 そんな都市の中の箱庭的庭園から、ぼくたちは、自然越しに、人工的に作り上げられた都市を想像の目で見上げる。

 するとまた、都心もまた、大きな箱庭のように感じてくる。陰陽併せ持ちながら、丁寧にあるいは雑多に並べられた多色刷りのビルや車や木々、そして人々。公園は、箱庭の中に作られた箱庭なのかもしれない。

 だとしたら、ぼくにとって、箱庭・トウキョウは、公園とおんなじ。いつだってぼくをひきつけ、その仕組みを知りたいと思わせる場所なのだ。

 ♣♣♣

浜離宮恩賜公園(はまりきゅうおんしこうえん)
*所在地:中央区浜離宮庭園1-1 TEL03-3541-0200(浜離宮恩賜庭園サービスセンター)
*開園時間: 9:00〜17:00(入園は16:30まで)
*休園日: 年末・年始 (12月29日〜翌年1月1日まで) ※イベント開催期間及びGWなどで休園日開園や時間延長が行われる場合もあり。
*入園料: 一般及び中学生300円、65歳以上150円、小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料。団体割引等あり。 *みどりの日(5月4日)、都民の日(10月1日)は入園無料。
*アクセス: <大手門口>地下鉄大江戸線「築地市場」(E18)「汐留」(E19)・ゆりかもめ「汐留」下車 徒歩7分 /JR・地下鉄銀座線・地下鉄浅草線「新橋」(G08・A10)下車 徒歩15分/<中の御門口>地下鉄大江戸線「汐留」下車10番出口 徒歩5分 JR「浜松町」下車 徒歩15分/水上バス(日の出桟橋─浅草)東京水辺ライン(両国・お台場行)「浜離宮発着場」下船

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆☆☆ 園内を散策するにはちょうどいい広さと言えるでしょう。お昼休みに、お花畑横の芝生でご飯を食べるとなごみます。
*ふたり: ☆☆☆ 浅草並木の薮あたりで蕎麦なぞいただいてから水上バスで隅田川を下って浜離宮へ。最高のデートコースでしょう。
*おおぜい:☆☆  上のコースは、遠方からの友人や家族にも喜ばれると思います。シメは汐留あるいはちょっと足を伸ばして銀座ナイトを。
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# by na2on | 2010-04-20 00:06 | 公園案内。
2010年 04月 19日
葛西臨海公園 いつかどこかで。
 駅を降りて、まっすぐのびる広い道を歩いてゆくと、海辺に面した崖の端に建つビルにいきあたる。全面ガラス張りの、向こう側が透けて見える建物の階段を、いちばん上までのぼる。すると、眼下に草はらと、砂浜、その向こうに海が広がる景色がガラスの先に広がる。海の向こうには工場地帯の煙突、左にはうっすらと房総の山々が姿を見せる。

 真下に目線を移し、草はらで走り回る子供や犬を眺めていると、既視感におそわれる。いつか、どこかで見たような景色だが、どこでだったか思い出せない。思わず階段を降りて、あたかも今まで見ていた映像の中へ自らが入って行くような心持ちになって、草はらに立つ。何種類かの草花を混ぜて作られた広い草はらを踏みしめながら、横切ってゆく。

 片隅に作られた丹精にこしらえられた花畑の向こうには、観覧車がひとつ、空に向かってそびえる。海を振り返って見てから木々の中へのびる小道に入ると、森のあの静かな空気に包まれる。ぽっかりと開いた人気のない緑地には、小川が流れ、忘れ去られたような小さな橋がかけられている。

 この公園を歩くと、いつかどこかで見たような場面が、ひそやかに連なってゆく。切ないような心象風景が、現実に描かれている感覚である。

 ぼくは公園の魅力のひとつに、自然と人間のせめぎあいのバランスがあると思っている。公園にある自然は、あくまで人の手によって管理された自然だ。しかし自然の意思のようなものは残っている。その野生の部分の残り具合で公園は魅力的になったり、つまらないものになったりする。

 ところが、海辺の公園に来ると、人工的にこしらえられたなぎさの、ずっと先まで広がる海は、やはり、人の手の及ばない自然だという気がする。もちろん、木々や草花や陸地の生き物だって、人間の意思など軽く乗り越える力強さは大いに持ち合わせている。しかし、水は彼ら以上に人の意思を寄せ付けない。

 海を見ると恐れや怖さをぼくは感じる。同時に郷愁も感じる。それらは、自然に対してぼくたちが抱く原初的な感情なのかもしれない。

 この公園のお隣、東京ディズニーランドに入れば、エンターテインメントを徹底的に追求して人の手を入れた結果、海辺特有の諸々は奇麗に拭い去られている。いい悪いの問題ではない。でも、ここから海越しに眺めていると、どこか刹那的な雰囲気が醸し出される。明るくすればするほど、何も変わらぬ海との対比が際立ってくる。

 葛西臨海公園も、展望ビルや、観覧車、水族館まであって、エンタメ面も追求されてはいるが、あくまで、海と陸地とのつなぎを、丁寧な筆の運びで、さりげないグラデーションになるよう作られた公園だと思う。圧倒的な海の光景を活かすべく敷地が取られ、そこにこしらえられた公園にも、木々や草花の自然が繁茂できる余白をたっぷりと取ったような、バランスの良さを感じる。

 青からゆるやかにみどりへと変わる、海と陸地のきわで目に入ってくる光景は、どれも、ざらりとした感触のフィルムで見ているようだ。海辺の公園は、ぼくたちがそれぞれに持っている昔、たしかにそこにいたことがあるような懐かしい景色を再現してくれる、日常から少しずれた、現実感がわずかにうすれた場所にあるのかもしれない。

 そうだとすれば、夕暮れまで、ここの草はらに座っていたい。そして、心の動きや、浮かぶ言葉に耳澄ませ、身をゆだねてみたい。

 ちなみに江戸川区は子供が1日遊べる公園が数多い。葛西臨海公園のわりと近くにある区立総合レクリエーション公園はその代表的な存在で、広大な敷地は明るさに満ちている。ボート乗り場やポニーライド、そして見事な花壇がそこここに点在するこの公園もぼくは大好きだ。当たり前だけど、住む人の中に時間をかけて根付いた場所は楽しいのだ。

 ♣♣♣

葛西臨海公園(かさいりんかいこうえん)
*所在地:江戸川区臨海町6-2-1
*アクセス:JR京葉線「葛西臨海公園」下車 徒歩1分/地下鉄東西線「西葛西」(T16)・「葛西」(T17)から 都バス 葛西臨海公園行き 約15分/「両国」から東京水辺ライン(水上バス) 約80分
*その他付帯設備:葛西臨海水族園(TEL03-3869-5152)●開園時間:9:30~17:00(入園は16:00まで)/●休園日:毎週水曜日(水曜日が祝日・都民の日にあたる場合は、その翌日が休園日)、12月29日〜翌年1月1日/●入園料:一般700円、中学生250円、65歳以上350円。団体割引等あり。ホテルあり(ホテルシーサイド江戸川 TEL 3804-1180)。海に面して人工的に作られたなぎさの公園、葛西海浜公園あり。

ミシュラン(☆3つが最高)
*ひとり: ☆   この公園でひとり一日過ごして楽しめるようなヒトこそ、公園の達人だと思います。ほんと気持ちいいんだから。
*ふたり: ☆☆☆ この公園でふたり一日過ごして楽しめるようなカップルこそ、いいカップルに違いない、と個人的には思います。
*おおぜい:☆☆☆ 休日は家族連れがたくさん来ます。橋を渡って渚で水遊びが出来るし、東側ではバードウォッチングが楽しめます。
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# by na2on | 2010-04-19 21:31 | 公園案内。